セッション情報 ワークショップ2(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化吸収学会合同)

GALT研究の最前線

タイトル 消W2-8:

アレルギー惹起性thymic stromal lymphopoietin (TSLP)の消化管自己免疫疾患での役割

演者 西浦 尚代(京都大大学院・消化器内科学DELIMITER京都大次世代免疫制御を目指す創薬医学融合拠点)
共同演者 木戸 政博(京都大大学院・消化器内科学DELIMITER京都大次世代免疫制御を目指す創薬医学融合拠点), 渡部 則彦(京都大大学院・消化器内科学DELIMITER京都大次世代免疫制御を目指す創薬医学融合拠点)
抄録 IL-7に類似したTSLPは、主に上皮細胞から分泌されるサイトカインであり、Th2型免疫応答を誘導し、喘息やアトピー性皮膚炎に加え、アレルギー性鼻炎や食物アレルギー下痢症などの病態形成に関わり、さらに、好酸球性食道炎患者の炎症粘膜局所において発現が増強していることも報告されている。一方、腸管上皮でのTSLP発現は、腸管での免疫恒常性維持に寄与し、腸管感染症において感染排除のためのTh2免疫応答に働いたり、薬剤誘発性腸炎モデルにおいて免疫調節性に働いたりすることが示されている。しかし、消化管粘膜において、胃粘膜に自己免疫機序によって生じる慢性萎縮性胃炎での、TSLPの役割は明らかではない。<目的・方法>Balb/c系統のマウスに新生仔期胸腺摘除法を用いて、胸腺由来のCD4+CD25+制御性T細胞(Treg)の除去を行うと自己免疫性胃炎が生じる。今回の研究では、この自己免疫疾患モデル系を用いて、野生型Balb/cマウスとBalb/c系TSLPR遺伝子欠損(TSLPR-KO)マウスに新生仔期胸腺摘除を行い、自己免疫性胃炎の病態形成におけるTSLPのもつ役割を検証した。<成績>Treg除去TSLPR-KOマウスでは、野生型Balb/cマウスと比較して、6週齢ですでに血清抗胃壁細胞抗体価の上昇が見られ、12週齢でも優位に上昇していた。Treg除去野生型Balb/cマウスの胃粘膜では、Th1優位なサイトカイン産生能を有するCD4陽性T細胞の浸潤があり、壁細胞の消失と腺窩上皮の過形成が認められるが、Treg除去TSLPR-KOマウスでは、CD4陽性T細胞のさらなる高度な浸潤を認め、壁細胞の消失と腺窩上皮の過形成が増強していた。以上のことから、Th1優位な自己免疫性胃炎モデルにおいて、TSLP-TSLPRシグナルの欠損から、自己免疫臓器炎の増悪がもたらされることが明らかとなった。<結論>TSLP-TSLPRシグナルが自己免疫疾患の発症に対して抑制的に作用しうることと、消化管粘膜上皮では、腸管のみならず、胃粘膜においてもTSLP-TSLPRシグナルが免疫調節性に働いていることが示唆された。
索引用語 自己免疫性胃炎, TSLP