セッション情報 ワークショップ3(肝臓学会・消化器病学会合同)

自己免疫性肝障害・薬物性肝障害のup-to-date

タイトル 肝W3-3追1:

PBC慢性非化膿性破壊性胆管炎の有無による肝脂質代謝の検討

演者 中牟田 誠(国立九州医療センター・消化器内科DELIMITER国立九州医療センター・臨床研究センター)
共同演者 桃崎 征也(国立九州医療センター・病理部門), 遠城寺 宗近(福岡大・薬学部免疫・分子治療学)
抄録 【目的】慢性非化膿性破壊性胆管炎(CNSDC)は、PBCの組織学的診断に重要である。しかしながら、CNSDCは認めないものの、抗ミトコンドリア抗体(AMA)陽性、胆道系酵素上昇、IgM高値であり、臨床的にPBCと診断される症例も存在する。この事実は、CNSDC出現以前にすでにPBCの初期病態が形成されている可能性を示唆している。我々は、PBC肝の脂質代謝異常が病初期よりすでに惹起されていること、PBCの病態形成にコリン~フォスファチジルコリン(PC)代謝が重要であることを報告して来た。今回、CNSDCの有無によるコリン~PC代謝の比較検討を行ったので報告する
【方法】PBC肝(n=57)[非CNSDC肝:n=24; CNSDC肝:n=33]と正常肝(n=20)よりmRNAを抽出し、定量的RT-PCR法を用いてコリン~PC代謝遺伝子発現を測定した。
【成績】非CNSDC肝においても、CNSDC同様に正常に比べて、PC合成関連酵素遺伝子CCT1等の発現は低下している一方、PCを胆汁中へ排泄するMDR3の発現は増加していた。これらの発現はCNSDCの有無による有意な差は認めなかった。また、血中コリンを取り込むOCT1の発現は、CNSDCの有無にかかわらず正常肝に比べて低下傾向にあった。
【結論】非CNSDCの状態ですでに肝細胞内のコリン~PC代謝は変化しており、細胞内のコリン、PCの低下(取り込み低下・排出増加)が示唆された。PCは疎水性胆汁酸による胆管障害に対して保護的に作用するので、非CNSDCでのPC低下は、すでに非CNSDCの時点で胆管障害が始まっている可能性があり、CNSDC出現以前の超早期の病態が存在することが示唆された。
索引用語 PBC, CNSDC