セッション情報 ワークショップ3(肝臓学会・消化器病学会合同)

自己免疫性肝障害・薬物性肝障害のup-to-date

タイトル 消W3-8:

自己免疫性肝炎の新国際診断基準の特徴と問題点

演者 金子 晃(NTT西日本大阪病院・消化器内科)
共同演者 久保 光彦(NTT西日本大阪病院・消化器内科), 竹原 徹郎(大阪大大学院・消化器内科学)
抄録 【目的】2008年に提唱された自己免疫性肝炎(AIH)の新国際診断基準の特徴と問題点について検討した。【対象】大阪大学消化器内科学関連の18病院から登録されたウイルス肝炎非合併のAIH 170例を対象とした。【成績】新基準における評価項目は自己抗体、IgG、肝組織像、肝炎ウイルスの有無の4項目のみに簡素化され臨床の現場で使いやすいものとなった。この4項目のうち抗核抗体については、わが国のようにHEp-2細胞を用いた測定では抗体価を1/2にすることと規定されたことで低力価の症例においてはスコアが下がることとなった。逆に、IgGについてはスコアの境界の値が大幅に引き下げられたことでスコアを引き上げる要因となり約7割の症例で2点となった。肝組織像については多くの症例がtypical AIHと判定されたが、判定基準の3所見のうちの1つであるemperipolesisはわが国ではほとんど認知されておらず、現状では他の2項目で判定せざるを得なかった。これらの要因の総和として、総合判定にてdefinite AIHと診断された症例の割合は旧基準の69%から75%に増加した一方、基準外となる症例の割合も1%から8%へと増加する結果となった。この基準外の8%、14例の症例はIgG正常(10例)または自己抗体陰性(8例)の非典型的な症例であり、このような非典型例の一部は新基準では除外されてしまう可能性があり注意が必要であると考えられた。また、この14例中12例は旧基準を満たしていることより、こうした非典型例の拾い上げの点では旧基準の方が優れており、新基準で基準外となった症例も旧基準で再評価してみる必要があるものと考えられた。【結論】新基準は簡便性の点では優れているが、IgG低値や自己抗体陰性などの非典型例は見逃される可能性がある。こうした非典型例が真にAIHであるのかどうか十分な検討が必要ではあるが、こうした症例の拾い上げの点では旧基準を用いるべきであると考えられる。また、肝組織像の基準はわが国の現状に合っていない点があり今後の検討が必要と考えられた。
索引用語 自己免疫性肝炎, 国際診断基準