セッション情報 ワークショップ3(肝臓学会・消化器病学会合同)

自己免疫性肝障害・薬物性肝障害のup-to-date

タイトル 肝W3-9:

自己免疫性肝炎における新国際診断基準の再評価

演者 阿部 和道(福島県立医大・消化器・リウマチ膠原病内科)
共同演者 阿部 正文(福島県立医大・病理病態診断学), 大平 弘正(福島県立医大・消化器・リウマチ膠原病内科)
抄録 【目的】2008年に自己免疫性肝炎(AIH)の新国際診断基準(新基準)が提唱された. しかし, 抗核抗体(ANA)の測定法の違いや肝組織においてこれまで本邦では一般的ではなかったemperipolesis(EP)の評価が問題となっている. 今回我々はAIH症例のラット肝とHEp2細胞を用いた蛍光抗体法でのANA力価の比較検討を行った. さらに組織標本を見直しEPについても再評価した. 【方法】当院でAIHと診断した40例の血清を用いて, ANAをラット肝とHEp2細胞を用いた蛍光抗体法で同時測定し, 抗体価を比較検討した. HEp2抗体価を1/2倍あるいは原力価で評価した場合の新基準での判定の違いについても検討した. さらに, 肝生検が施行されたAIH 25例の組織標本を, 病理医が再評価しEPについて検討した.【成績】ラット肝とHEp2細胞を用いたANAの測定値を比較検討した結果, 陰性0点, 40倍1点, 80倍2点, 160倍以上3点とすると, ラット肝からHEp2細胞(1/2倍)へ変更した場合, 変化なし22例, 1点上昇3例, 2点上昇1例, 3点上昇1例であり, 逆に1点低下9例, 2点低下3例, 3点低下1例と感度が低下する症例も認めた. HEp2抗体価を原力価でスコアリングすると7例で点数が増加し6例で診断が変更となり確診が5例増加した. 一方, EPは25例中8例に認められた. このうち肝組織がtypicalとなった症例は6例であった. 総スコアでは確診20例, 疑診4例となった. HE染色ではEPの診断が困難で鍍銀染色で確認された症例が1例あり, EPの判断の難しさを示していた. そこで, EPを評価項目から無くし、全例で認めないものとして計算した場合, 1例のみ確診から疑診に変更となった. 【結論】今回の検討では, ANAに関してはラット肝とHEp2細胞を用いた力価に差がある症例が認められ, 抗体価の評価は診断に大きく影響すると思われた. EPは新基準における最終評価にはあまり影響しない可能性が示唆された. ANAの測定法や抗体価の評価の統一も含め, 本邦における多施設での検討が必要と考えられた.
索引用語 自己免疫性肝炎, emperipolesis