セッション情報 ワークショップ3(肝臓学会・消化器病学会合同)

自己免疫性肝障害・薬物性肝障害のup-to-date

タイトル 肝W3-10:

自己免疫性肝炎病期進行例の病態と予後

演者 鈴木 義之(虎の門病院・肝臓センター)
共同演者 小林 万利子(虎の門病院・肝臓センター), 熊田 博光(虎の門病院・肝臓センター)
抄録 【目的】本邦の自己免疫性肝炎(AIH)は予後は良好であるとの報告が多いが、近年では肝不全兆候を伴う肝硬変(LC)への進展例も散見される。一方最近では急性発症例や組織学的検査が不可能な高齢症例の増加に伴い診断に苦慮する症例も増加し、治療開始が遅れ病期の進行をきたすこともある。このため我々は進行例や発癌症例の病態と治療の反応性を解析し、いかに有効な治療を行うかを検討したので報告する。【方法】1979年から2010年までの約30年間に当院でAIHと診断され長期に渡る経過が観察し得た症例は134例存在する。今回は他の要因を除外するためにウイルスマーカー陽性症例やPBCとのoverlap症例は除外し116例につき解析を行った。診断は1999年の国際診断基準のscoringと2008年の簡易systemによるscoringを用いて行った。LCへの進展は、組織学的検査または血小板10万未満、食道静脈瘤の出現をもって診断した。【成績】平均観察期間は中央値12年(1~30年)、全症例116例中、76例(66%)はdefiniteと診断され、残る40例(34%)がprobableであった。AIH診断時すでにF4以上、または血小板10万未満の症例は12例(10%)存在した。肝硬変への移行率は年率で1.8%であり、当院で経過観察を行っているウイルス性肝疾患患者に比して低率であった。現在LCと診断されている症例は26例(22%)であり、LC進行に関わる要因は診断時の背景因子で検討すると、IgG (γグロブリン) 高値、血小板低値、胆道系酵素高値、HLADR4陽性、治療中の再燃が有意な因子であった。発癌を確認し治療を行った症例は5例存在するが、2例は11ヶ月後と36ヶ月後に癌死している。平均生存期間は49.4か月であり、従来の報告に比べ長期生存が可能であり、特にアザチオプリンなどの併用により再燃が抑えられた症例においては進行、発癌共に抑制されていた。【結論】高齢化する我が国の現状を勘案すると今後AIHからLCへの進行ひいては発癌症例がさらに増加する可能性がある。再燃を抑え病期の進行を食い止めるにはPSL以外の治療薬を含めた治療法を検討していくことが肝要であると考える。
索引用語 自己免疫性肝炎, 肝硬変