セッション情報 ワークショップ3(肝臓学会・消化器病学会合同)

自己免疫性肝障害・薬物性肝障害のup-to-date

タイトル 肝W3-11:

新規自己免疫性肝炎(AIH)モデルにおけるAIH劇症化機構の解明

演者 青木 信裕(京都大大学院次世代免疫制御を目指す創薬医学融合拠点・消化器内科)
共同演者 木戸 政博(京都大大学院次世代免疫制御を目指す創薬医学融合拠点・消化器内科), 渡部 則彦(京都大大学院次世代免疫制御を目指す創薬医学融合拠点・消化器内科)
抄録 ヒト自己免疫性肝炎 (AIH)は、血中自己抗体の出現を伴い、臓器特異的な自己反応性T細胞の脱制御が想定される自己免疫疾患であるが、慢性肝炎から劇症肝炎まで多彩な経過をとる。このような特異なAIHの病態の解析が可能な自然発症型の動物モデルがなかったが、最近私達は、抑制性共刺激分子PD-1欠損マウスに新生仔期胸腺摘除を施行することで、ヒトAIHに類似したAIHが発症し、約4週齢で死に至ることを見いだした。そして、AIH発症誘導には脾臓でのCD4T細胞の活性化が必須であり、その脾臓CD4T細胞は濾胞ヘルパーT細胞(TFH細胞)の形質を持つ細胞であることを明らかにした。しかし、発症から劇症化に至るメカニズムは明らかではない。
【目的・方法】本研究では、AIHの劇症化に至る機序の解明を目指して、このAIHモデルマウスでの劇症期の免疫学的解析を行った。
【結果】このAIH モデルでは、劇症化とともに、CD8T細胞がCD4T細胞より肝組織に広範に浸潤し、致死的な肝細胞障害の誘導にはCD4T細胞のみならず、CD8T細胞も必要であった。肝炎劇症期には、肝脾いずれにおいても、CD4T細胞はTFH細胞としての形質であるBcl-6、IL-21の発現がみられる一方で、t-betとIFN-γの発現も上昇しており、IFN-γ、TNF-αの蛋白レベルでの産生も認められた。また、肝脾いずれのCD4T細胞、CD8T細胞においても、CXCR3の発現がみられるようになり、そのCXCR3リガンドに対する中和抗体投与でこれらの細胞の脾臓から肝臓への移行が阻害され、肝炎の劇症化が抑制できることが明らかとなった。さらに、これらTFH細胞のTh1様細胞への形質転換による肝炎劇症化は、抗IFN-γや抗IL-12p40中和抗体投与では抑制できず、これら以外のサイトカインがその病態変化に関与することが示唆された。
【結論】新規致死性AIHモデルにおいて、脾臓での脱制御下でのTFH細胞分化誘導がAIHの発症を誘導するが、AIHの劇症化には、単純なTh1免疫応答ではなく、脱制御したTFH細胞のTh1様細胞への形質転換とそれに付随したCD8T細胞による細胞障害が関与していることが明らかとなった。
索引用語 AIH, TFH