セッション情報 |
ワークショップ3(肝臓学会・消化器病学会合同)
自己免疫性肝障害・薬物性肝障害のup-to-date
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タイトル |
肝W3-13:抗ミトコンドリアM2抗体(M2抗体)は薬物性肝障害(DILI)において一過性に陽性を示すことがある
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演者 |
渡邊 真彰(北里大・消化器内科) |
共同演者 |
渋谷 明隆(北里大・医療安全・管理学) |
抄録 |
【目的】ミトコンドリア全9分画に対応するミトコンドリア抗体(AMA、FA法)は、DILIなどPBC以外の疾患でも陽性を示しうる。一方、現在本邦で普及し、M2分画のみに対応するMESACUP-2テスト(ELISA法)によるM2抗体の定量測定(正常値7未満)は、PBCにおいて感度、特異度とも高い。しかし本研究は、M2抗体もDILIにおいて一過性に陽性を示す場合があり、PBCとの誤診を防ぐ必要があることを示した。【方法】対象は2007年以降、薬物投与後に肝機能障害を発症し、M2抗体陽性で、かつJDDW2004診断指針でDILIと診断された4症例である。同期間中に1年以上M2抗体の変動を観察したM2抗体陽性PBC26症例を対照群とし、両症例群間のM2抗体の変動と臨床像の差異を検証した。【成績】DILI4症例は肝細胞障害型1例、胆汁うっ滞型2例、混合型1例に分類され、JDDW2004診断指針で4点以上を得た。2例は、当初PBCと診断されウルソデオキシコール酸を投与されていた。M2抗体値は発症時57(18-72)を示したが、肝機能障害の改善とともに減少し、2.0(0.7-3.5)年で全例陰性化した。AMAは全例陰性で、2例に肝生検を施行したがPBCに合致する所見はなかった。一方PBC症例のM2抗体は2.7(1.0-8.7)年間測定され、測定開始時値133(10-183)と最新値107(5-174)の間に有意変動はなく(p=0.51)、陰性を持続した症例はなかった。M2抗体値は、DILI症例(発症時値)に比しPBC症例(測定開始時値)で高値を示した(p=0.04)が、年齢、性別、IgM値、ANA陽性率に有意差はなかった。【結論】M2抗体はDILIで陽性を示すことがあるが、DILIの収束に伴い陰性化する点でPBCとは異なる。特にPBCとしての組織診断が得られていないM2抗体陽性症例は、定期的にM2抗体を測定すべきであり、陰性化した場合は真にPBCであるか否か再検討する必要がある。DILIにおけるM2抗体陽性の意義、病態は今後の検討課題である。 |
索引用語 |
薬物性肝障害, 抗ミトコンドリアM2抗体 |