セッション情報 |
ワークショップ3(肝臓学会・消化器病学会合同)
自己免疫性肝障害・薬物性肝障害のup-to-date
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タイトル |
肝W3-14:自己抗体陽性の薬物性肝障害の特徴
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演者 |
辻 恵二(広島市立安佐市民病院・内科) |
共同演者 |
鴫田 賢次郎(広島市立安佐市民病院・内科), 宮木 英輔(広島市立安佐市民病院・内科) |
抄録 |
【目的】薬物性肝障害の診断において自己抗体が陽性の場合、自己免疫性肝疾患との鑑別に難渋することがある。今回我々は薬物性肝障害における自己抗体陽性例の特徴と自己免疫性肝疾患との鑑別について検討を行った。【方法】当院にて2000年1月から2010年12月までに薬物性肝障害と診断された158例を対象とした。薬物性肝障害の診断はDDW-J 2004の診断基準、自己免疫性肝炎(AIH)の診断はIAIHG (2008年)診断基準、原発性胆汁性肝硬変(PBC)は「難治性の肝疾患」研究班(1996年)による診断基準を用いて行った。【成績】抗核抗体(ANA)またはミトコンドリア抗体(AMAまたはM2)が陽性なのは20例(13%)で男性3例、女性17例で、平均年齢は62±17歳であった。DDW-J 2004スコアは6~10点(平均7.7点)で診断基準では全例薬物性肝障害の可能性が高いとなった。自己抗体陽性群と陰性群との比較では女性比率(85% v.s. 52%、P=0.006)のみに差があった。自己抗体陽性20例の最終診断の内訳は薬物性肝障害のみが15例、AIHとの合併が2例、薬物を契機のAIHの急性発症が1例、PBCとの合併が1例、AIH-PBCオーバーラップ症候群との合併が1例で、自己免疫性肝疾患は薬物性肝障害全体の3%、自己抗体陽性の薬物性肝障害の25%に関与または合併していた。ANA陽性19例のうちAIH合併例と非合併例では血液検査や臨床所見上は平均IgG (mg/dl)(1981±299 v.s. 1496±489、P=0.04)のみに有意差があった。また自己免疫性肝疾患との合併や鑑別の診断には肝生検による組織検査が有用であった。治療は薬物を契機のAIHの急性発症の1例は被疑薬中止のみで回復し、PBCの合併とAIH-PBCオーバーラップ症候群2例は UDCAのみを使用し継続、AIHとの合併の2例は、ステロイドとUDCAを使用し継続していた。【考案】ANA陽性の場合、IgG値は診断の参考になるが、正確な鑑別は困難であった。【結論】自己抗体陽性の薬物性肝障害の診療において被疑薬中止後も肝障害遷延化の兆候がみられる場合、自己免疫性肝疾患の関与について早期に肝生検による組織検査が望ましいと思われる。 |
索引用語 |
薬物性肝障害, 自己免疫性肝疾患 |