セッション情報 一般演題

タイトル 55:

門脈内ガス血症を伴った急性上腸間膜動脈血栓症の1剖検例

演者 井上 朝子(伊勢崎市民病院)
共同演者 押本 浩一(伊勢崎市民病院), 飯田 智広(伊勢崎市民病院), 片貝 堅二(伊勢崎市民病院), 下田 隆也(伊勢崎市民病院), 増田 淳(伊勢崎市民病院), 松本 純一(伊勢崎市民病院), 荒井 泰道(伊勢崎市民病院)
抄録 【症例】71歳 女性【既往歴】30歳:虫垂炎、62歳:肺結核手術、69歳・70歳:急性心筋梗塞【主訴】腹痛【現病歴】平成14年9月30日22時頃より突然腹部全体の疼痛が出現。10月1日0時に当院を受診し入院。【経過】腹部は膨隆し、右側優位に腹部全体の自発痛があり右下腹部から臍右側にかけての圧痛を認めたが、筋性防御や反跳痛は認めなかった。入院時検査所見では、WBC 10400 /μl、CRP 0.77 mg/dlと炎症反応の軽度上昇を認めたがその他の異常は認めなかった。心電図では心房細動を認めた。腹部単純X線写真では著明な大腸ガスの増加を認めた。腹部超音波検査では肝内にはびまん性に点状・斑状の高エコーを認めた。腹部CT検査では肝左葉を中心に肝全体に、肝辺縁に及ぶ樹枝状の門脈内ガス像を認め、上行結腸から横行結腸にかけての壁内気腫像を認めた。上腸間膜動脈の血栓は明らかでなかった。門脈内ガスを伴った上腸間膜動脈血栓症が疑われ、手術適応と考えられたが、左室駆出率が20%と重度の慢性心不全の状態であったため手術を断念し、10月3日に死亡した。【病理解剖所見】盲腸から脾彎曲付近までの腸管壁の広範な不規則地図状の壊死・粘膜下水腫・粘膜下気腫状変化を認めた。上腸間膜動脈の起始部はやや狭窄傾向があり、第二分枝の入口部に小血栓を認めた。【結語】門脈内ガス血症は様々な消化器疾患にともなう比較的まれな病態で、一般に予後不良な徴候とされている。原因となった疾患によりその予後は異なるが腸管壊死が原因の場合は依然として非常に予後不良である。門脈内ガス血症を伴った急性上腸間膜動脈血栓症の1剖検例を経験したのでここに報告した。
索引用語 門脈内ガス, 上腸間膜動脈血栓症