セッション情報 ワークショップ4(消化器がん検診学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

腹部超音波検診の現状と展望

タイトル 検W4-1:

腹部超音波検診の現状と問題点

演者 小野寺 博義(宮城県立がんセンター・消化器科)
共同演者 渋谷 大助(宮城県対がん協会がん検診センター), 岩崎 隆雄(東北大・消化器内科)
抄録 【目的】腹部超音波がん検診のエビデンスを文献に求めて問題点を探り,今後どうすべきかを検討する。【方法】1982年から2010年までに日本消化器がん検診学会誌に掲載された218編の腹部超音波検診に関する論文を見直し,がん発見率,生存率,診断精度,集検費用に関するデータを検討した。同じ施設,同じ対象の場合には,原則として一番新しいデータを採用した。また,超音波医学,日本がん検診・診断学会誌も参考にした。【成績】死亡率低下を証明した報告はなかった。受診者が一万人以上の検診でのがん発見率は0.013~0.135%で,臓器別では肝0.0022~0.034%,胆嚢0.0039~0.020%,膵0.0019~0.014%,腎0.008~0.080%であった。5年生存率は肝がん33.3~37.7%,胆嚢32.4%~80.3%,膵12.5~22.0%,腎93.1~97.5%であり,10年生存率を報告したのは2施設であった。検診の精度は感度67.9~95.3%,特異度83.7~98.9%,偽陰性率4.7~32.2%であった。要精検率は1.3~31.8%,精検受診率は36.9~99.4%であった。費用便益分析の報告はないが,がん1例発見当りの集検費用については6施設から報告があり,94~659万円であった。これは胃,大腸集検より高額であった。特に臓器別では更に高額となり,膵がん1例発見に15,193万円を要したとの報告もみられた。【結論】これまで超音波検診については基準化されていなかったために,検診方法,事後管理,精度管理が施設によって異なっていた。今後は基準化を早急に進めて議論を深める必要がある。また,日本消化器がん検診学会の全国集計は肝胆膵部門が極めて手薄である。発見がん症例の登録を行ない,学会としても詳細な分析を行なう必要がある。
索引用語 腹部超音波検診, 精度