セッション情報 ワークショップ4(消化器がん検診学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

腹部超音波検診の現状と展望

タイトル 検W4-3:

腹部超音波検診の現状と展望―30年の経験からー

演者 三原 修一(日赤熊本健康管理センター)
共同演者 大竹 宏治(日赤熊本健康管理センター), 川口 哲(日赤熊本健康管理センター)
抄録 我々は、1983年8月から人間ドックおよび地域・職域集検において腹部超音波検診を行ってきた。今回、30年間の経験をもとに、その現状と展望について報告する。【成績】2008年3月までの25年間の受診者数は延べ1,703,350人(実質387,725人)で、肝細胞癌393例、胆嚢癌165例、膵臓癌151例、腎細胞癌389例、膀胱癌178例など1,678例(対延べ受診者発見率0.10%、対実質受診者発見率0.43%)の悪性疾患が発見された。その他、肝血管肉腫、胆管嚢胞腺癌、腎カルチノイド、腎悪性リンパ腫、副腎癌など稀有な悪性疾患も多数発見されている。切除例は肝細胞癌87例(22.1%)、胆嚢癌149例(90.3%)、膵臓癌79例(52.3%)、腎細胞癌383例(98.5%)、膀胱癌172例(96.6%)など、転移性癌および白血病を除く1,569例中1,034例(65.9%)であった。切除例の10年生存率(Kaplan-Meier法)は肝細胞癌44.9%、胆嚢癌82.2%、膵臓癌39.4%、腎細胞癌97.4%、膀胱癌98.0%であった。肝細胞癌ではTACE・PEIT・MCT・RFAによる治療例の10年生存率も13.8%であった。膵臓癌では、浸潤性膵管癌の10年生存率は26.2%、その他の癌では67.7%と良好であった。また、全悪性疾患切除例の10年生存率は82.0%、25年生存率は80.0%と良好であった。特に、胆嚢癌、腎細胞癌、膀胱癌は早期発見例が多く、超音波検診が最も有用な癌と思われた。【まとめ】腹部超音波検診は、消化器癌、腎泌尿器癌など腹部諸臓器の癌の早期発見に有用であり、さらに普及していくことが望まれる。しかし、質の高い検診を普及し、その評価を高めていくためには、検診の精度管理、特に事後管理の精度向上が不可欠である。当センターにおける25年間の要精検率は1.76%、精検受診率は83.5%であったが、平成21年度には医療連携システムを確立し精検受診率98.7%にまで上昇した。今回、超音波検診をさらに発展させていくための方策について言及したい。
索引用語 腹部超音波検診, 精度管理