セッション情報 一般演題

タイトル 109:

肝膿瘍と鑑別困難であった胆嚢腺筋症合併胆嚢癌の一例

演者 金井 崇(東海大学医学部内科学系消化器内科)
共同演者 渡辺 純夫(東海大学医学部内科学系消化器内科), 永田 順子(東海大学医学部内科学系消化器内科), 常盤 香代子(東海大学医学部内科学系消化器内科), 加川 建弘(東海大学医学部内科学系消化器内科), 渡辺 勲史(東海大学医学部内科学系消化器内科), 峯 徹哉(東海大学医学部内科学系消化器内科)
抄録 症例は74歳、男性。1997年に早期大腸癌に対して粘膜切除術を施行した。この時胆嚢腺筋症を指摘された。2002年11月頃より体重減少を認め、12月に40℃の弛張熱が出現し外来受診した。腹部超音波検査で肝内に多発する低エコーの腫瘤を指摘され入院となった。血液検査では白血球増多とCRP高値、胆道系酵素の軽度上昇を認めたが、他の肝機能や腫瘍マーカーは正常範囲であった。入院後も40℃台の発熱、右季肋部痛が持続し、肝膿瘍を疑い抗生物質投を行ったが解熱傾向はなかった。MRIでは肝内側区域および前区域に多発する結節を認め、T1WIで肝実質とiso-intensity、T2WIでは肝実質とiso~low-intensity   であり、Gd-DTPA T1WIではvascularityは認められないものの、late phaseでring状の造影効果を呈し、転移性肝癌と肝膿瘍の鑑別が困難であった。Gaシンチグラムでは胆嚢、肝臓に集積がみられ、骨髄穿刺では炎症所見のみで癌の骨髄浸潤を認めなかった。腫瘍生検を試行した結果、低分化型腺癌の病理所見が得られ、胆嚢癌の肝転移と診断した。抗癌剤としてTS-1 120mg/日を開始し、持続する発熱に対しステロイド投与した。経過中に肝門部のリンパ節転移増大により閉塞性黄疸を示すもTS-1投与にて一時減黄をみた。治療開始3週目に難治性の口内炎を認めたため化学療法中止となり、2003年4月多臓器不全のため永眠した。胆嚢腺筋症経過中に胆嚢癌を合併し、臨床経過、画像所見にて肝膿瘍との鑑別が困難であった一例を経験した。示唆に富む症例と考え、若干の文献的考察を加え報告する。
索引用語 胆嚢癌, 肝膿瘍