抄録 |
【目的】腹部超音波検診の精度管理の向上のためカテゴリー分類による判定基準案が示された。この判定と施設内で実施していた判定カテゴリーとの比較をしたので報告する。【対象】2010年度に人間ドック及び巡回検診を受診した73,987名について、判定基準案以前に技師自身による癌の可能性を推測したカテゴリーと判定基準案にて見直ししたカテゴリーを比較検討した。【結果】要精検者856名(要精検率1.16%)精検受診者数617名(精検受診率72.1%)発見癌48例(発見率0.06%)であった。 判定基準案以前に技師自身による癌の可能性を推測したカテゴリーから肝癌13例では増2例、減6例、不変5例であった。腎臓癌15例では増3例、減2例、不変10例、膵臓癌8例では増3例、減1例、不変4例、胆嚢・胆管癌8例では、増3例、減1例、不変4例、転移性肝がん4例では、減2例、不変2例であった。全体では11例が増、12例が減、25例が不変という結果であった。肝臓癌では減、膵臓、胆嚢、胆管癌では増の症例が多かった。一定の基準を示すことで検診の精度向上につながると考えられるが、今後もカテゴリー分類を検証していく必要がある。 地域(県)では、検診実施機関が自主的に集まり、超音波検診に限らず、各施設での発見癌、癌発見率などを検討している。更に県でも成人病検診連絡協議会において、討議され指導にあたっている。 消化器がん検診学会関東甲信越では、スクリーニング講習会、ハンズオンセミナー、県単位のセミナーなど積極的に実施し、技師の検査精度の向上に取り組んでいる。今後各県単位で進んでいる癌登録から、検診発見による癌の実態や偽陰性例把握による検診精度の見直し、超音波検診の有用性が明らかになることを期待する。【結論】腹部超音波の判定基準案は悪性度を判定する一定の目安となり全国の精度を維持するのに有用と思われる。肝臓の腫瘤性病変はカテゴリーが減少する傾向が、膵・胆では増加する傾向が見られた。さまざまな機関、学会で超音波検診の精度を検討し、有用性を高める必要がある。 |