セッション情報 ワークショップ4(消化器がん検診学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

腹部超音波検診の現状と展望

タイトル 検W4-7:

腹部超音波がん検診で発見された悪性腫瘍の現状と基準(案)

演者 高島 東伸(オリエンタルクリニック)
共同演者 乾 和郎(藤田保健衛生大坂文種報徳会病院・内科), 廣瀬 光彦(オリエンタルクリニック)
抄録 本学会において、腹部超音波(US)がん検診の質ならびに精度管理の向上を目的に基準案が作成された。当施設で発見した悪性腫瘍のUS所見を基準案のカテゴリー分類に当てはめて、その有用性について検討した。対象:2002年1月から2010年12月に実施したUS検診215,651例中から発見された悪性腫瘍は76例(0.036%)で、このうちルーチン検査の対象臓器とした肝臓、胆道、膵臓、腎臓、脾臓で発見された肝細胞癌8例、転移性肝癌9例、胆管細胞癌2例、膵癌7例、胆嚢癌1例、腎癌24例の計51例とした。方法:発見時のUS所見と過去のUS所見を基準案のカテゴリー分類(以下、C:No)に照らし合わせた。結果:51例中50例は充実性病変(C:3~4)が指摘された。残りの1例は胆嚢癌症例でび慢性の壁肥厚(C:3)であった。過去の所見は51例中初回受診が20例で、前年実施が23例、2年以上前の実施が8例であった。前年に実施されたうちの17例は異常を認めず、異常を認めた6例は肝細胞癌の2例に低エコー腫瘤(C:3)を、膵癌の1例に低エコー腫瘤像、嚢胞、膵管拡張(C:3~4)、胆管細胞癌1例は血管腫疑いの指摘から精査を指示していた。胆嚢癌例では胆石に対する経過観察と腎臓癌1例には水腎症(C:3)に対する再検査をそれぞれ指示していた。2年以上前に実施された6例は異常なしであったが、異常を認めた2例はいずれも腎癌で、高エコー(C:3)の精査と腎結石(C:2)の経過観察を指示していた。結論:基準案におけるカテゴリー分類はUS所見の判定の共通化が期待できるが、実際には癌発見の契機となるのは腫瘍性病変としての指摘が多かった。また(C:5)は癌の進行した状態であるため、救命可能が期待できる早期発見のためには精査を必要とする間接的な所見の検討が必要と考えられた。また、今回の検討より異常を指摘した症例においての放置例、不適切な経過観察が問題であり、精度管理の徹底が重要であると考えられた。
索引用語 腹部超音波検診, がん検診