抄録 |
【目的】当院で発生した非B非C急性肝炎症例についての検討。【方法】2003年10月から2011年2月までの82か月間で、当院で発生した急性肝障害例で、B及びC型肝炎以外のウイルス性肝炎、及び原因不明肝炎症例を対象とした。【成績】122例の急性肝障害症例が発生していた。34例の薬物性、その他の原因17例を除く71例がウイルス性あるいはウイルス性疑い症例であった。71例中非B非C肝炎症例は28例、原因不明例は13例であった。非B非C肝炎28例はHAV4例、HEV5例、EBV16例、CMV2例、HSV1例であり、全ウイルス性肝炎症例の40.4%であった。劇症化症例はなく、重症肝炎1例のみであった。HAVとHEV症例は平均年齢50才代、EBV、CMV、HSV症例は平均年齢28.4才であった。原因不明症例は男性7例女性6例だが、6例はHEV未測定であった。A型肝炎、E型肝炎ではALT(IU/L),T-Bil(mg/dl)最高値平均はそれぞれ3029IU/L, 6.35 mg/dlと2769.4IU/L, 6.92mg/dlであった。EBV, CMV及びHSVによる肝炎症例ではALT378.5IU/L, T-Bil1.42 mg/dlであり、HAV,HEVに比して肝障害は軽度であった。E型肝炎4例は自治医科大学感染・免疫学講座ウイルス学部門で遺伝子解析を行い、3例は3sp株で同期間に近隣施設で発生した1例と同一株であった。またE型肝炎症例ではHEV測定で薬物性肝障害との鑑別がなされた1例が存在した。EBV肝炎では1例が経過中に血球貪食症候群(VAHS)を合併し血液内科で治療を受け軽快した。また他の1例は経過中に脳脊髄炎を発症し神経内科で治療を受け軽快した。【結論】過去7年間に発症した非B非C肝炎はEBVが多数例であった。またA型肝炎とE型肝炎はほぼ同数例であった。検討では、E型肝炎は散発性であるが、遺伝子診断により同一株からの感染と考えられ、長期間維持される感染源の存在が示唆された。また薬物性肝障害との鑑別においてHEVの除外診断が必要と思われた。非B非C肝炎は、経過良好な疾患であるが、特にEBV肝炎症例において血液系、脳神経系の合併症を生じる可能性があり、慎重な経過観察が必要と思われた。 |