セッション情報 ワークショップ5(肝臓学会・消化器病学会合同)

非B非C肝炎ウイルスによる肝障害

タイトル 肝W5-2:

初診時血小板数はA型急性肝炎の重症化を予測する因子である

演者 広瀬 俊治(東海大・消化器内科)
共同演者 加川 建弘(東海大・消化器内科), 峯 徹哉(東海大・消化器内科)
抄録 【目的】A型急性肝炎において血小板数が低下している症例が散見されるが、本邦において初診時血小板数と肝炎の重症度について詳しく解析した報告は殆どない。初診時検査値でA型急性肝炎の重症化の予測因子がないか検討する。【方法】1998年以降東海大学に入院しIgM-HA抗体陽性からA型急性肝炎と診断された症例を対象とした。PT活性が40%未満となった症例を重症と定義した。重症と非重症で性別、年令、初診時の血算、CRP、Alb、AST、 ALT、 ALP、 γ-GTP、 Bil値に差があるか検討し重症化予測因子をLogistic regression modelで解析した。【成績】症例は32例、男性28例、女性4例。重症は7例(21.9%)で、そのうち劇症肝炎が2例(6.3%)だったが2例とも回復した。死亡は1例(3.1%)で直接死因はウイルス関連血球貪食症候群だった。重篤な肝外合併症として急性腎不全が2例、カリニ肺炎、化膿性脊椎炎が1例だった。背景に慢性肝疾患がある患者はなく、全症例でHBs抗原陰性、HCV 抗体陰性だった。重症では非重症に比し、血小板数低値(8.7±3.3 vs 17.0±7.1 x10/µL,P= 0.005)、AST高値(7120±3442 vs 2690±2534 IU/L, P=0.001)、ALT高値(5816±3115 vs 3486±2363 IU/L,P=0.001)、Alb低値だった (3.0±0.6 vs 3.8±0.5mg/dl,P=0.001)。他の因子に差はなかった。多変量解析では血小板数とASTが重症化を予測する独立因子だった。血小板数を10万で分けると、10万未満では5/7(71.4%)、10万以上では2/25(8.0%)が重症であり(P=0.002)、positive predictive value 71.4%、negative predictive value 92.0%であった。劇症肝炎や重篤な肝外合併症を起こす割合は10万未満で4/7(57.1%)、10万以上で2/25(8.0%)(P=0.012)、入院日数は10万未満で56.4±64.2日、10万以上で18.7±7.3日(P=0.005)だった。【結論】血小板低値例では重症化や肝外合併症のリスクが高く入院日数も長い。A型急性肝炎において初診時血小板数は重症化の予測因子となる。
索引用語 A型急性肝炎, 重症化