セッション情報 ワークショップ5(肝臓学会・消化器病学会合同)

非B非C肝炎ウイルスによる肝障害

タイトル 肝W5-3:

当院における経口感染ウイルス性肝炎(A型およびE型)35例の臨床的、ウイルス学的検討

演者 渡邊 俊司(自治医大・消化器内科)
共同演者 礒田 憲夫(自治医大・消化器内科), 岡村 宏明(自治医大・ウイルス学)
抄録 【背景】かつてよりA型肝炎は経口感染ウイルス性肝炎として知られており、近年でも感受性者の高齢化による重症化、隣国韓国での大流行、あるいは予防のためのワクチン接種なども話題としてあがることは、しばしばである。また近年では、かつて輸入感染症として知られていたE型肝炎の、国内感染事例も増加しており、A型、E型肝炎は、感染拡大の危険性を孕んでいる経口感染ウイルス性肝炎として、その対策が求められている。【目的】当院での経口感染ウイルス性肝炎症例35例につき、その臨床的、ウイルス学的特徴を集計し、考察する。【方法】当科入院データベース(1989年以降)をもとにA型、あるいはE型肝炎と診断された症例、35例を抽出し、その臨床的、ウイルス学的特徴をまとめた。【成績】A型急性肝炎20例(男女比13:7)、E型急性肝炎15例(男女比13:2)が確認された。発症年齢(平均[幅])はA型41(21-63)歳、E型59(28-76)歳であった。臨床的特徴としては、A型では2例が重症肝炎、1例が劇症肝炎、E型では3例が重症肝炎、1例が劇症肝炎であった。重症化した症例では、血漿交換療法、ビリルビン吸着療法、ステロイドパルス療法などの保存的治療にて軽快し、死亡例は見られなかった。感染経路として、海外での感染が疑われる症例はA型では3例、E型で1例見られた。その他は、国内での感染と考えられ、E型肝炎では鹿肉、馬肉、牛肉の摂取歴を7例で認め、A型、E型ともに牡蠣、生鮮魚介類の摂取も、感染経路の候補として注目された。HEV genotypeは3型が11例、4型が3例、3型と4型の重複感染が1例であった。【考察】A型肝炎、E型肝炎ともに、感染経路の候補として魚介類、鹿肉等の摂取エピソードが注目されたが、感染源を特定することが困難な症例もあった。HEV genotype 4と肝炎重症化との関連性が指摘されているが、我々の症例でも劇症肝炎の1例は4型、重症型の3例中2例は4型もしくは3型・4型の重複感染であった。
索引用語 A型肝炎, E型肝炎