セッション情報 ワークショップ5(肝臓学会・消化器病学会合同)

非B非C肝炎ウイルスによる肝障害

タイトル 消W5-5:

急性肝障害症例におけるE型肝炎の検討

演者 新井 雅裕(東芝病院・消化器内科)
共同演者 手島 一陽(東芝病院・消化器内科), 金原 猛(東芝病院・消化器内科)
抄録 【目的】E型肝炎に関する問題点を明らかにするため、当院を受診した急性肝障害症例の検討を行った。【方法】2009年4月以降受診した急性肝障害症例を対象とし、臨床背景、経過を検討すると共に、初期血清でA、B、C、E型肝炎ウイルス、EBウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)の感染を検討した。【結果】(1)2年間で31例が、急性のトランスアミナーゼ上昇を理由に入院した。原因は、HAV2例、HBV5例、HEV7例、EBV3例、CMV2例、薬物4例、アルコール4例、不明4例であった。(2)健診で肝障害の指摘を受け、HEVによる肝炎と診断された非入院1例を加えたE型肝炎8例での検討:年齢中央値は46.5歳(40-70歳)、全例男性。受診動機は、黄疸1例、他の慢性疾患の経過観察ないし健診での血液検査異常5例、咽頭痛・食欲低下などでの受診による血液検査異常2例。主な合併症は、慢性関節リウマチ2例、好酸球増多症1例でいずれもプレドニン内服中であった。全例輸血歴無く、原因と推定される性交渉歴なし。レバー(動物種は不明)、イノシシ肉などの摂取は3例に認めるのみで、他は感染経路不明。居住地ないし勤務先が当院近隣に位置していたが、生活圏の特別な重複は認識されなかった。飲酒歴および血清学的検査から、アルコール性肝炎、EBV感染、CMV感染、HBV急性増悪と判断されうる症例がそれぞれ1/2/1/1例、計5例存在した。HEVの遺伝子型はいずれも3型を示したが、特定のクラスター形成は無かった。重症化例は存在せず、特別な治療を必要としなかったが、高度黄疸遷延例が1例存在した。プレドニン内服中の1例では、ウイルス血症が約3ヶ月と長期に持続し、感染予防の観点から注意を要すると考えられた。【考案】中規模一般病院である当院を2年間に受診した急性肝障害症例の25%が急性E型肝炎であった。その約60%では、HEVの検索を行わなければ、他の原因と診断されたであろうと推測された。感染経路と推測される病歴を欠く症例も多く、急性肝障害全例に対するHEV診断の必要があり、同検査法の早期の保険収載が望まれる。
索引用語 E型肝炎ウイルス, 急性肝炎