抄録 |
【背景と目的】E型急性肝炎(AHE)重症化にはHEV側因子(genotype 4)、宿主因子(高齢)の関与が報告されている。一方、AHE黄疸遷延例の存在はかねてから指摘されているが、その臨床像や臨床上の意義に対する定まった見解はみられない。そこで、AHE遷延化例の臨床像を明らかにしその背景をを検討した。【方法】1999年から2011年3月までに経験したAHE83例のうち、肝炎発症1か月後の総Bilが10mg/dl以上を遷延化と定義し、遷延化例と非遷延化例とを比較検討した。【結果】AHEは83例でそのうち遷延化例は8例(9.7%)であった。遷延化例は年齢(52歳)、性別(男性5例)、飲酒歴(3例)、初診時ALT(2490IU/l)、AST(1933IU/l)で非遷延化75例とは差を認めないが、BMI値(26.9, p=0.0057)、脂肪肝の合併( 6例、p=0.0001)、初診時総Bil(22.3mg/dl、p<0.0001)、genotype 4(4例、p=0.032)、重症化(6例, p<0.0001)で有意な差が認められた。【考察】AHE遷延化はBMI高値、脂肪肝の合併、初診時総Bil高値、genotype4を背景とし、臨床経過では肝炎重症化に強く関連した。またBMI高値や脂肪肝の合併は肝機能回復速度を反映すると思われ、AHEの臨床経過に影響する要因の一つであることが示された。【結語】E型急性肝炎ではおよそ10%に遷延化を認め、E型急性肝炎の遷延化にはBMI高値、脂肪肝の合併、重症化、総Bil高値、genotype 4が関与していた。 |