抄録 |
【緒言】非肝炎ウイルスによる肝炎の中でもEBVとCMVによる肝炎は臨床上しばしば遭遇するが、これらの比較した報告は1997年のWatanabeらの報告、2000年のTakedaらの報告以降ほとんど皆無である。近年成人におけるEBVあるいはCMVの抗体陽性率は次第に低下しているとの報告もあり、今後、さらに成人における肝炎の原因ウイルスとして重要になる可能性が考えられる。今回我々は一般市中病院における過去5年間の症例を検討し、その動向について考察した。【対象と方法】2005年1月より2010年12月までに当院内科、小児科にて診療を行ったEBV, CMV初感染による肝炎症例36例。ウイルス別、あるいは診療科別に各種因子を検討。最近のEBV, CMV肝炎の実態について検討した。【結果】EBV, CMV間に男女差は認めなかった。小児科では全例(12例)がEBVによる肝炎であったが、内科ではCMVが58%(14例)と過半数であった。全症例での検討ではEBV(11歳, 0-41歳; 中央値, 範囲)の方がCMV(33歳, 19-45歳)と比較し年齢が有意に若年であった。小児と成人では免疫反応が異なると考えられるため内科症例のみ(24例)での検討を行ったところ、EBVがCMVと比較しやや年齢が低く(27歳, 15-41歳 vs 33歳, 19-45歳)、AST経過中最高値が高値の傾向(247, 87-594 vs 166, 63-281)であった。ALT経過中最高値(413, 108-702 vs 27, 87-473)、T.Bil経過中最高値(0.7, 0.4-2.4 vs 0.7, 0.4-6.9)、入院期間(10, 5-23 vs 15, 0-43)に関しては両者に差は認めなかった。【まとめ】EBVの方が若年に発症し、AST、ALTなどの炎症マーカーがやや高値となる傾向であった。小児まで含めた検討でも同様にEBVの方がより炎症マーカーが高値であった。 |