セッション情報 | ワークショップ6(肝臓学会・消化器病学会合同)全身疾患における肝病変 |
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タイトル | 肝W6-1:心血管イベント発生に及ぼす肝脂肪化の影響 |
演者 | 藤田 尚己(三重大大学院・消化器内科学) |
共同演者 | 伊藤 正明(三重大大学院・循環器内科学), 竹井 謙之(三重大大学院・消化器内科学) |
抄録 | 【目的】メタボリック症候群(MeS)を代表とする様々な生活習慣病は心血管イベント発生の重要な因子となり、その発生予測に内膜中膜複合体厚(IMT)などの頚動脈エコー所見が有用とされている。一方、肝におけるMeSの表現型であるNAFLDが注目され様々な病態解析がすすめられているが、肝脂肪化の心血管イベント発生に及ぼす影響には不明な点も多い。そこで今回我々は以下の検討を行った。 【方法】対象は当院にて頚動脈エコー検査が施行された920例中、高安病、HCV/HBV陽性者、記録不備者等を除いた887例(68.1±11.0歳。M/F=661/226、BMI=23.6±4.0)。このうち肥満(BMI≧25)かつ低飲酒者(20g/日未満)で、薬剤性等の他の明らかな肝疾患を否定した有肝障害患者89例(64.1±12.2歳。M/F=67/22、BMI=28.3±4.2)をNAFLD群とし、その基礎疾患の頻度や血液検査所見、更には頚動脈エコー所見を検討した。NAFLD群と年齢・性別・BMI・飲酒歴・喫煙歴をmatchさせたcontrol群89例(64.2±11.3歳。M/F=67/22、BMI=28.3±3.5)との比較も行った。 【成績】NAFLD群においては高率に基礎疾患を有しており[DM/HTN/脂質代謝異常症(HL)/虚血性心疾患/脳血管障害=56.2/80.9/77.5/37.1/15.7%]、non NAFLD群798例に比しDM/HTN/HL/心疾患は有意に高率であった。血液検査所見では中性脂肪値に加え、Hb値(13.3±1.9 vs 12.3±2.2g/dl)や血清鉄値(89.1±41.3 vs 69.9±39.4μg/dl)、フェリチン値(225±435 vs 169±186ng/ml)がNAFLD群で有意に高値であった。またmean IMT(0.83±0.40 vs 0.68±0.46mm)やmax IMT(2.31±1.41 vs 1.16±1.19mm)もNAFLD群で有意に高く、プラーク有病率も高かった(82.0% vs 56.7%)。Matched control群との比較でも、HTN/心疾患有病率はNAFLD群で有意に高く、Hb値、血清鉄値、max IMT値も有意に高値であった。 【考察】肝を中心とする内臓脂肪の蓄積は、脂質代謝異常のみならず、鉄動態や血液粘稠度の変化を介して動脈硬化をより伸展させ、重大な心血管イベント発生のリスクとなる可能性が示唆された。 |
索引用語 | NAFLD, 心血管イベント |