セッション情報 ワークショップ6(肝臓学会・消化器病学会合同)

全身疾患における肝病変

タイトル 肝W6-2:

非アルコール性脂肪性肝障害例での非肝疾患のインパクト:HCV例との比較

演者 荒瀬 康司(虎の門病院・肝臓センターDELIMITER虎の門病院・健康管理センター)
共同演者 川村 祐介(虎の門病院・肝臓センター), 熊田 博光(虎の門病院・肝臓センター)
抄録 【目的】非アルコール性脂肪性肝障害(NAFLD)の心・脳血管系病変、悪性腫瘍等の長期的な予後を調査し,非肝病変がどの程度予後に関連するかにつき検討した.
【方法】対象は過去16年間にNAFLDと診断され,初診時60歳以上であった1600例とした.内訳は男性1200例,女性400例,平均値62.3歳,body mass index(BMI)=25.1,AST=29IU/L,ALT=37IU/Lであった. 別に性,年齢をマッチングさせたHCV 陽性1600例(脂肪肝なし)をコントロールとした. 対象症例での平均観察期間はNAFLD群7.2年,HCV 陽性群7.8年であった. 2群での心・脳血管系病変(虚血性心疾患,脳梗塞・脳出血)の累積発生, 全悪性腫瘍発生および累積生存につきretrospectiveに検討した. 要因の検討には宿主側背景(性,年齢,BMI、高血圧・糖尿病等の合併症),血液生化学的検査値(アルブミン・血小板数・AFP等)等を用いた.
【成績】
1) 心・脳血管系病変:発症数はNAFLD群で137例,HCV陽性群で40例であり,10年での発症率はそれぞれ,13.5%,3.7%であった(P<0.0001).
2) 全悪性腫瘍発生:悪性腫瘍の発生数はNAFLDで165例[肝がん10例(6.1%)]、HCV陽性群で424例[肝がん281例(66.3%)]であり,10年での悪性腫瘍発生率はそれぞれ,14.0%,31.9%であった(P<0.0001).
3) 死亡:死亡例はNAFLD群で137例[肝がん・肝不全による肝疾患関連死は6例(4.4%),肝がん以外の悪性腫瘍死49例(35.8%),心・脳血管系病変死34例(24.8%)],HCV陽性群で367例[肝がん・肝不全による肝疾患関連死は230例(62.7%)]であった.10年での生存率はHCV群で76.5%,NAFLD群で93.5%であった(P<0.0001). 死亡は,高齢,HCV陽性,糖尿病,アルブミン(3.9g/dl未満),血小板数低値(15万/μl未満),AST高値(37IU/L以上),AFP高値(10ng/ml以上)で有意に高率であった.
【結論】HCV例での肝疾患関連死が60%であったの比し,NAFLDでの肝疾患関連死は10%以下であった.NAFLDでは肝臓病変以外に,肝以外の悪性腫瘍,心・脳血管系病変の発症にも注意深いフォローが必要と考えられた.
索引用語 非アルコール性脂肪性肝障害, 全身病変