セッション情報 シンポジウム16(消化器内視鏡学会・消化器病学会合同)

胆膵疾患に対するtherapeutic EUSの現状(EUS-FNA を除く)

タイトル 内S16-11:

癌性疼痛に対するEUS下腹腔内神経叢/節ブロック術のストラテジー

演者 坂本 洋城(近畿大・消化器内科)
共同演者 北野 雅之(近畿大・消化器内科), 工藤 正俊(近畿大・消化器内科)
抄録 【背景】腹部内臓痛に由来する疼痛は腹腔内神経叢や神経節が関与している。腹腔神経叢は腹腔動脈(CA)と上腸間膜動脈(SMA)の基部周辺を囲む大きな神経叢であり、神経節は神経叢以外の末梢部の神経細胞の集合体である。腹腔神経叢ブロック術(CPN)は、腹腔神経叢に薬液を注入して神経を遮断する疼痛緩和法であり、超音波内視鏡(EUS)を用いたCPN(EUS-CPN)が現在普及している。近年では神経節に直接薬剤を注入するEUS下腹腔神経節融解術(EUS-CGN)や、SMAを越えた部位に薬液を注入するEUS下広範囲腹腔内神経叢融解術(EUS-BPN)が新たな手技として報告されている。【目的】今回我々は癌性疼痛症例に対し、EUS-BPNにCGNを組み合わせた疼痛治療(EUS-BPN+CGN)を施行し、適応と限界について前向き検討を行った。【対象と方法】対象はEUS下疼痛緩和治療を施行した141症例中EUS-BPN+CGNを試みた38症例。EUS-BPNとCPNは、それぞれSMAとCAの両側に1%リドカイン3mlと水溶性造影剤(5%)を含有したエタノール10mlを注入した。CGNは1~2ヶ所の腹腔神経節にエタノールをそれぞれ2ml注入した。EUS-BPN+CGNが不可能であった場合はCPNとCGNの組み合わせたCPN+CGNを施行した。いずれの治療が不可能であった場合は単独の処置をEUS-BPN、CPNおよびCGNの順で試みた。疼痛の程度はVASを用い、手技直後、7日後、30日後にVASの改善度を測定した。【結果】EUS-BPN+CGNは38例中21例に可能であり、困難症例はEUS-CPN+CGN(8例)、単独のBPN(3例)、CPN(6例)あるいはCGN(1例)を行った。38例中9例に腹水を認めたが、全例にいずれかのEUS下疼痛治療が可能であった。手技直後、7日後、30日後のVAS はEUS-BPN+CGN群;7.6± 1、2.0± 1、2.4 ± 2、EUS-CPN+CGN群; 7.6± 1、2.7± 1、3.9 ± 2、単独群;7.2± 2、3.9± 3、5.3 ± 3であり、EUS-BPN+CGN群が他の群と比べ最も良好なVASの改善が得られた。【結語】EUS-BPN、CPNおよびCGNは疼痛緩和効果を得ることが可能であったが、EUS-BPNにCGNを組み合わすことでさらなる疼痛緩和効果を得ることが期待される。
索引用語 EUS, 腹腔神経