セッション情報 ワークショップ6(肝臓学会・消化器病学会合同)

全身疾患における肝病変

タイトル 肝W6-3:

糖尿病患者における非侵襲的肝線維化予測値と全身合併症との関連の検討

演者 細川 貴範(武蔵野赤十字病院・消化器科)
共同演者 黒崎 雅之(武蔵野赤十字病院・消化器科), 泉 並木(武蔵野赤十字病院・消化器科)
抄録 【目的】NAFLD、NASHはメタボリック症候群の肝臓での表現形とされ、同様にメタボリック症候群と関連する心血管イベントや悪性腫瘍といった他の全身疾患の高危険群であることが予想される。そこで今回、糖尿病患者および健診受診者において非侵襲的肝線維化予測値であるNAFLD fibrosis score(NFS)とFIB-4を算出し、線維化進行例の頻度や臨床像、その予後を比較検討した。【方法】当院にて2005年から2009年に糖尿病教育入院をうけた患者327例 と当院で2003年から2004年に健診を受けた1718例を対象とし、その臨床背景と予後を検討した。【成績】脂肪肝は健診受診者では462例(27%)、糖尿病患者では117例(36%)で認められた。健診受診者において、心血管イベントは脂肪肝ありで5例(1.1%)、脂肪肝なしで8例(0.63%)と脂肪肝でリスクが高い傾向があったが(p=0.35)、糖尿病患者では脂肪肝ありで11例(9.4%)、脂肪肝なしで27例(18%)と脂肪肝がないほうがリスクが高かった(p=0.052)。NFS/FIB-4の平均は健診患者で-2.2/1.22で、糖尿病患者で-0.13/1.75と教育入院患者で高値であった。NFSのcut off値を-0.11とすると健診患者ではNFS高値群で心血管イベントが多く(9.5%vs0.65%,p=0.010)。糖尿病患者でも新規の心血管イベントはNFS高値群で多かった(5.7%vs1.2%,p=0.030)。また悪性腫瘍の発生もNFS高値群で多かく(12%vs5.3%,p=0.031)、FIB-4のcut off値を2.4とするとFIB-4高値群でも多かった(20%vs6.6%,p=0.047)。【結論】糖尿病教育入院患者では健診受診者に比べ脂肪肝が多く、NFS,FIB-4ともに高値であり、肝線維化進行例が多いことが予想された。肝線維化高値が予測されるNFS,FIB-4高値の症例は心血管イベントや悪性腫瘍の発生の高リスク群であり、慎重な経過観察が必要である。
索引用語 非侵襲的肝線維化予測値, NAFLD