セッション情報 ワークショップ6(肝臓学会・消化器病学会合同)

全身疾患における肝病変

タイトル 肝W6-5:

全身性エリテマトーデス(SLE)患者における肝障害の検討

演者 高橋 敦史(福島県立医大・消化器・リウマチ膠原病内科)
共同演者 阿部 和道(福島県立医大・消化器・リウマチ膠原病内科), 大平 弘正(福島県立医大・消化器・リウマチ膠原病内科)
抄録 【目的】膠原病では、肝臓にも種々の病変が出現する。その発症には自己免疫的な機序が関与しているが、肝障害の原因には膠原病自体による肝障害、副腎ステロイド剤による脂肪肝、薬剤による肝障害などがある。本研究ではSLE患者における肝障害の実態を明らかにすることを目的とした。【方法】SLE患者206名(男37名、女169名)を対象とし、肝障害(AST>33IU/L、ALT>27IU/L、ALP>359IU/L、γGTP>49IU/L)を呈した頻度、原因、発症時期、検査成績を検討した。【成績】肝障害は124名(男28名、女96名)の60.2%に認めた。原因は頻度順に薬剤性37例(29.8%)、SLE肝障害35例(28.2%)、脂肪肝22名(17.7%)、自己免疫性肝炎(AIH)7名(5.6%)、原発性胆汁性肝硬変症(PBC)3例(2.4%)、胆管炎2例(1.6%)、アルコール2例(1.6%)、HCV1例(0.8%)、不明14例(11.3%)であった。肝障害例の検査成績はAST97.4 (IU/L)、ALT123.0 (IU/L)、ALP297.6 (IU/L)、γGTP133.1(IU/L)であった。原因上位4群の比較ではAST・ALTがそれぞれ、薬剤性97.3・150.3、SLE90.5・94.5、脂肪肝40.0・69.2、AIH366.0・419.4でありAIHで有意な上昇を認め、ALP・γGTPは薬剤性388.5・198.7、SLE239.4・89.1、脂肪肝192.9・71.9、AIH548.0・119.0と薬剤性で有意に上昇していた。肝障害の出現時期はSLE発症時が56例(45.2%)で、原因別にSLE肝障害は発症時が28例(80%)、薬剤性と脂肪肝は経過中がそれぞれ20例(54.1%)、16例(72.7%)と多かった。AIHは7例中4例でSLEが先行し、PBCはSLE先行、同時、後発が各1例ずつであった。SLE発症時の肝障害の有無でSLE活動性の指標となる検査項目と臨床所見に有意差を認めなかった。SLE肝障害の4例で肝生検が実施され、3例で非特異的反応性肝炎を認めた。【結論】SLE患者の6割に肝障害を認め、原因は薬剤性とSLE自体が3割ずつであった。SLE発症時の肝障害では両原因とも考慮されるが、服薬歴とALPやγGTPなどの検査成績が両者の鑑別に重要と考えられた。また、AST、ALTの上昇が著しい場合にはAIHの合併なども考慮し肝生検なども考慮する必要があると思われた。
索引用語 全身性エリテマトーデス, 肝障害