セッション情報 ワークショップ6(肝臓学会・消化器病学会合同)

全身疾患における肝病変

タイトル 肝W6-6:

肝生検を施行した肝機能障害を伴う不明熱症例の検討

演者 中井 隆志(大阪市立総合医療センター・肝臓内科)
共同演者 川崎 靖子(大阪市立総合医療センター・肝臓内科), 木岡 清英(大阪市立総合医療センター・肝臓内科)
抄録 【目的】肝機能障害を伴う発熱性疾患は少なくなく、日常診療にてしばしば経験し、またコンサルテーションを受ける機会も多い。その原因検索として肝生検の役割は重要であり、診断のみならず治療法決定のための一因となることもある。今回、不明熱・肝機能障害にて肝生検を施行した症例について検討した。【方法】対象は1994年1月から2010年12月までに、当科にて不明熱・肝機能障害を主訴とし、肝生検施行まで病名未確定であった11例である。これらの臨床的特徴について検討した。【成績】性別は男性4例、女性7例。平均年齢は51.2±17.2歳(21~75歳)。肝生検施行直前の血液検査ではAST 123.5±147.6 IU/l(20~455 IU/l)、ALT 115.5±132.6 IU/l(26~483 IU/l)、ALP 832.2±901.9 IU/l(178~3433 IU/l)、LDH 427.6±338.7 IU/l(102~1230 IU/l)、T.Bil 1.0±0.83 mg/dl(0.4~3.4 mg/dl)、Alb 3.06±0.75 g/dl(1.9~4.5 g/dl)、WBC 8742.7±5208.2 /mm3(2460~21280 /mm3)、PLT 25.4±16.6×104 /mm3(6.7~69.5×104 /mm3)、PT活性 96.2±12.8 %(76.3~113.3 %)、CRP 5.25±4.86 mg/dl(0.20~14.18 mg/dl)であった。最終的な確定疾患は悪性リンパ腫2例(B細胞性1例、T細胞性1例)、肉芽腫性肝炎2例、粟粒結核1例、血球貪食症候群1例、成人Still病1例、皮膚筋炎1例、原因不明3例であった。このうち、肝生検にて確定診断しえた症例は悪性リンパ腫の2例、粟粒結核の1例であった。肉芽腫性肝炎の2例はいずれも肝組織では肉芽腫の形成はみられず、非特異的肝炎であったが、ステロイド投与にて病態が軽快した。原因不明の3例は肝組織でも非特異的肝炎であった。【結論】肝生検を施行しても確定診断に至らない症例も存在したが、確定できた症例では速やかに適切な治療が可能となった。肝機能障害を伴う不明熱症例に対しては肝生検を考慮すべきと考えられた。
索引用語 不明熱, 肝機能障害