抄録 |
【背景】経鼻内視鏡は高画質内視鏡に比較して画質が劣るため,周囲との色調変化や凹凸が少ない病変の発見が比較的困難であり,スクリーニングにおいてもindigocarmine(IC)等の色素撒布の併用が望ましい。また最近,Kawaharaらは胃癌の範囲診断に,通常のICに酢酸を加えた新色素AIM(acetic-acid indigocarmine mixture)が有用であると報告している。【目的】今回我々は,経鼻内視鏡検査における胃癌スクリーニングにAIMが有用であるかどうか検討した。【対象と方法】対象は平成22年1月から平成23年2月までの期間において,学会指導医2名が実施した極細径内視鏡を用いた経鼻内視鏡検査である。そのうち木村・竹本分類のC-2以上の萎縮を認めた症例に対して,通常観察後,スクリーニング目的で胃全体に色素を撒布して再度観察した。色素は1月から7月まではIC,8月から翌2月まではAIM(1.5%酢酸8ml,IC4ml,蒸留水8ml)を用い,色素撒布後に初めてその存在を指摘できた病変について両色素で比較検討した。使用機種は主にOlympus社のGIF-N260,XP260N,XP260NSである。【成績】全内視鏡件数2,332件のうち,経鼻内視鏡検査数は全体で522件であり,さらにC-2以上の萎縮例は203例であった(色素別ではIC群102例,AIM群101例)。その結果,色素撒布後に発見された病変は,IC群では胃潰瘍瘢痕が2例のみで腫瘍性病変は認められなかったが,一方のAIM群では,腺腫が2例,早期胃癌が2例,ポリープが3例,胃潰瘍瘢痕が1例と有意に多くの腫瘍性病変が発見された。【考察】IC群では腫瘍を発見することができなかったが,AIM群では4例に腫瘍が発見された。発見癌の1例は通常観察でほとんど色調変化や凹凸を呈しない前庭部小彎の早期癌で,もう1例は胃体部前壁の小胃癌であった。AIMに含まれる酢酸は,腫瘍部と非腫瘍部におけるICの付着性を変化させ,さらに萎縮粘膜の凹凸を強調させるのではないかと考えられた。まだ症例数は少ないが,苦痛が少ない経鼻内視鏡スクリーニングにおけるAIM撒布の有用性が示唆された。 |