抄録 |
【目的】経鼻内視鏡は受容性の高い検査で胃がん検診でも用いられているが、スコープの細径化による吸引力の低下、レンズ面の洗浄力の低下といった不具合が生じ検査時間の延長や病変の見逃しも危惧される。そこで今回前処置のガスコン水を従来の80mlから150mlに増量することによって経鼻内視鏡の観察能が向上するか否かを検討した。【方法】当院でスクリーニング目的で経鼻内視鏡を行った144例を対象とし前処置としてガスコン水(ジメチコン80mg,プロナーゼ2万単位,重曹1gを水で溶解)を80mlの群と150mlの群に分け以下の項目につき比較を行った。1.残存する水の量,2.食道の泡・粘液量,3.胃の泡・粘液量,4.泡・粘液の除去に用いた水散布の回数,5.レンズ面の洗浄に難渋した症例の比率,6.検査の所要時間。残存する水の量は胃体部大弯の半分未満を“少”、半分以上を“多”とし、泡・粘液量は認めないものを“ない”食道胃全周の1/2未満を“少”1/2以上を“多”とした。【結果】1.残存する水の量(少:多)80ml群(81.9%:18.1%),150ml群(83.3%:16.7%) 2.食道の泡・粘液量(なし:少:多)80ml群(32%:59.7%:8.3%),150ml群(32%:61.1%:6.9%) 3.胃の泡・粘液量(なし:少:多)80ml群(32%:56.9%:11.1%),150ml群(33.4%:56.9%:9.7%) 4.水散布回数(なし:1-2回:3回以上)80ml群(32%:56.9%:19.4%),150ml群(23.6%:61.1%:15.3%) 1.2.3.4の項目で両群に差は認めなかった。5.レンズ面の洗浄に難渋した症例の比率は80ml群6/72(8.3%),150ml群1/72(1.4%)であり150ml群で有意に低下した(p<0.05)。6.検査時間は80ml群336.2±84.3秒,150ml群310.8±70.8秒であり150ml群で有意に短かった(p<0.05)。【結論】ガスコン水150ml群は従来の80ml群と比較しレンズ面の洗浄に難渋する症例が少なく、検査時間は短かった。泡・粘液の量、水散布回数に差がなかったことから検査時間の短縮は胃内容の粘稠度低下に伴う吸引時間の短縮に起因するものと考えられた。ガスコン水増量は経鼻内視鏡の欠点を補う一つの方法である。 |