抄録 |
胆膵領域の改訂における特記事項としては、疾患概念としてのIgG4関連硬化性胆管炎・自己免疫性膵炎、診断面では臨床検査法として血清IgG4測定、画像診断ではPET-CTが挙げられる。治療面では胆道癌に対する塩酸ゲムシタビン(GEM)+シスプラチン(CDDP)療法と膵癌に対する分子標的薬erlotinibが挙げられる。自己免疫性膵炎が報告された後、IgG4関連疾患という概念が提唱されたが、IgG4関連硬化性胆管炎は、IgG4関連疾患の部分症である。消化器病専門医としては、これらの疾患を念頭に置いた検査計画の立案と結果の解析、癌との鑑別、ステロイド療法の実施などが確実にできるべきである。これらの疾患では血清IgG4測定を想起できるかが大きなポイントとなる。一方、進行膵胆道癌では、最終的な手術適応や術式選択は肝胆膵外科医にコンサルトし、「切除不能」と安易に判断しないよう努める。 胆膵領域の画像診断では超音波内視鏡(EUS)と細径針吸引生検(FNA)を組み合わせたEUS-FNAは、切除不能膵癌において病理組織学的エビデンスを得る際に有用な検査法である。ただし切除可能膵癌では賛否両論があり、むしろEUS-FNAを実施すべきではないという考えもある。また、浸潤性膵管癌を中心とした膵癌以外ではEUS-FNAは一般的ではなく、胆道疾患ではあまり実施されていない。Positron emission tomography (PET)は単独で施行されることはなくなり、CTと組み合わせたPET-CTが普及している。PET-CTは病変の存在診断・増殖活性評価が同時にできることから胆膵領域腫瘍の診断と経過観察に用いられているが、質的診断における有効性についての評価は定まっていない。がん薬物療法では、膵胆道癌の抗悪性腫瘍薬としてGEM・S-1しかなかった時代から、胆道癌ではGEM+CDDP(GC)療法が標準治療となり、膵癌では2011年に上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害薬erlotinibが承認され、GEMとの併用が一次治療のみで認められた。以上のように、胆膵領域のトピックスが改訂研修カリキュラムに取り入れられている。 |