抄録 |
[目的]EUS-FNAの有用性が浸透しtherapeuticEUSも施行されている.当院は2001年1月から2012年2月まで施行したEUS-FNA関連手技のべ960例中,therapeuticEUSは86例(9.0%:腹腔神経叢破壊術30,各種ドレナージ(膵嚢胞41,胆管7,膵管2),膵癌免疫療法6)であった.この中で癌性疼痛への腹腔神経叢破壊術(CPN)は有用性が高く,近年より選択的な神経節破壊術(CGN)も報告されている.当院でのCPN/CGNの現状をretrospectiveに検証し,今後の展望も述べる.[対象]EUS-CPN/CGNを施行した30例中,1ヶ月後の治療効果判定が可能な26例.効果判定は,1ヶ月後のVAS scoreが1/2以下,または麻薬量の不変を有効とした.検討項目は1患者背景2治療成績3治療手技(CPN/CGN)別効果4導入時期(麻薬量)別効果5エタノール使用量別効果6穿刺部位(腹腔動脈左右/直上)別効果.[結果]1患者背景:平均年齢65.8±10.0歳,男女比11:15,全例膵癌,平均観察期間3.4月(1-14ヶ月)2治療成績:有効率76.9%,偶発症23.1%(血圧低下3,下痢2,疼痛1)3手技別有効率CPN:CGN 84.2%:57.1%.4麻薬使用量別有効率 NSAIDsのみ60%,麻薬20mg以下88.8%,21-40mg100%,41-80mg100%,81mg以上50%.5CPN症例のエタノール使用量別1-10ml:11-20ml 83.3%:84.6%.6CPN穿刺部位(腹腔動脈左右:直上)66.7%:87.5%[考察/結語]CGNが既報に比し低く,神経節の描出が不十分であることが原因と考える.またCPN施行時期別でNSAIDs群の効果が低かった.2005年以降疼痛が軽微な段階(NSAIDs)で治療しているが,2008年からCGNを導入しており手技的な要因の関与が考えられる.裏返すと手技的に容易な腹腔動脈分岐直上へのCPNでも,十分にエタノールが局注できれば効果が期待できると思われる.[展望]現在,我々はミニブタを用いて,腹腔内臓器への微小異物穿刺注入実験を施行しており,19G穿刺針を用いて安全かつ確実に肝臓,膵臓,脾臓内に異物を注入留置する事が可能であった.EUSガイド下注入治療の新たな展開が期待できる実験結果と考えている. |