抄録 |
【目的】経鼻内視鏡は通常径内視鏡と比べると画質や生検時の操作性が劣るが、内視鏡検診でのニーズは非常に高く,今や欠くことは出来ない。そこで、前橋市多施設内視鏡個別検診における経鼻内視鏡の成績から内視鏡検診における経鼻内視鏡の位置付けを検討した。【対象と方法】平成18~20年度の内視鏡個別検診受診者43,109人(平成18年度11,970人,平成19年度15,094人,平成20年度16,045人)を対象とし,経鼻内視鏡検査の比率,胃がん発見率,早期がん比率を内視鏡学会専門医施設と非専門医施設に分けて検討した。また、受診者の年齢別経鼻内視鏡検査選択率も検討した。【結果】経鼻内視鏡検査の割合は年々上昇し,専門医施設,非専門医施設別では、平成18年が17.8%、11.6%,平成19年が39.6%、27.7%,平成20年が45.6%、33.8%であった。経鼻内視鏡の胃がん発見率は0.67%で,経口内視鏡の胃がん発見率0.57%よりも高く,専門医施設,非専門医施設別では,経鼻内視鏡が0.90%と0.46%,経口内視鏡が0.54%と0.59%で,経鼻内視鏡の胃がん発見率には専門医,非専門医間に差が見られた。発見早期がん比率は,経鼻内視鏡68.6%,経口内視鏡71.3%で,専門医施設では73.2%と74.6%,非専門医施設では60.0%と69.6%であった。3年間の発見胃がん259例(経口発見173例,経鼻発見86例)の初回受診発見がん率は経口が60.1%,経鼻が70.9%であった。年齢別の経鼻内視鏡選択率は,40~49歳が49.7%,50~59歳が48.4%,60~69歳が41.6%,70~79歳が35.4%,80歳以上が31.9%で,若い受診者ほど経鼻内視鏡を選択しており,この比率に男女差は見られなかった。【結語】経鼻内視鏡は胃がんスクリーニングを目的とした内視鏡検診において胃がん発見率,発見早期がん比率ともに経口内視鏡と差がない。内視鏡検診の受診者を増加させるには経鼻内視鏡の更なる普及が重要である。専門医と非専門医間の経鼻内視鏡の胃がん発見精度の差を少なくするには,経鼻内視鏡を基準とした標準撮影法を決め、これを遵守させていくことが必要である。 |