セッション情報 ワークショップ8(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

肝疾患と幹細胞-炎症、再生、発癌まで-

タイトル 肝W8-1:

糖鎖を用いた肝がん幹細胞の単離とその生物学的特性

演者 三善 英知(大阪大大学院・機能診断科学)
共同演者 鎌田 佳宏(大阪大大学院・機能診断科学DELIMITER大阪大・消化器内科), 竹原 徹郎(大阪大・消化器内科)
抄録 【目的】癌幹細胞とは、自己複製能と多分化能、腫瘍形成能をもった細胞であり、抗癌剤や放射線治療に耐性をもつことから癌再発の原因とされている。従来CD133は癌幹細胞の分離・同定に有用なマーカーとされてきたが、近年CD133単独ではなく他のマーカー分子と併用した方がより効率的に癌幹細胞を分離できることが明らかになってきた(J.Clin. Invest. 120, 3326-39, 2010)。一方、糖鎖は細胞表面に存在するタンパク質や脂質を修飾し、その構造は癌化に伴い特徴的に変化する。そこで本研究では、肝がん細胞株を用いて、癌幹細胞に特徴的な糖鎖構造を探索し、糖鎖が癌幹細胞マーカーとして有用であるか検討を行った。【方法と結果】肝癌幹細胞として近年報告されたCD133+CD13+細胞を肝癌細胞株Huh7より分離し、その糖鎖構造を、レクチンアレイを用いて網羅的に解析したところ、7種のシアル酸認識クチンとの結合性が有意に高いことが明らかとなった。そこで、代表的なシアル酸認識レクチンSSAと抗CD133抗体を用いて細胞を分離し、NOD/SCID マウスに移植したところ、CD133+SSA+細胞はCD133+SSA- 細胞よりも有意に高い腫瘍形成能を示した。また、CD133+SSA+細胞は、in vitroにおける癌幹細胞の能力の指標とされる強いスフェロイド形成能・抗がん剤耐性能を有していた。さらに、肝癌細胞株Hep3Bから分離したCD133+CD13+細胞も同様にシアル酸認識レクチンとの結合性が有意に高いことが確認された。【結論】肝がんの幹細胞ではシアル酸が高発現しており、そのシアル酸を認識するレクチンであるSSAとCD133抗体を用いることにより、より効率的に癌幹細胞を分離することができた。(共同研究者) 大阪大学 機能診断科学 奥戸久美子、森脇健太、 同消化器外科 原口直紹、森 正樹
索引用語 肝がん, 幹細胞