セッション情報 ワークショップ8(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

肝疾患と幹細胞-炎症、再生、発癌まで-

タイトル 肝W8-3:

DDCにより誘導される肝障害、肝前駆細胞、オーバル細胞増殖を介した肝再生、修復における核内受容体CARの役割

演者 山崎 勇一(群馬大大学院・病態制御内科学)
共同演者 柿崎 暁(群馬大大学院・病態制御内科学), 森 昌朋(群馬大大学院・病態制御内科学)
抄録 【目的】肝臓は本来、さまざまなタイプの肝障害に反応して、再生修復する能力を備えている。この間再生能力が障害された時、成熟肝前駆細胞としてオーバル細胞が増殖し、肝再生、修復を促していると考えられている。オーバル細胞は肝細胞に分化し、障害された肝機能を回復させる。0.1%の3,5-diethoxycarbonyl-1,4-dihydrocollidine (DDC)を含有した食餌の供与はげっ歯類における化学物質誘導のオーバル細胞増殖の最も効果的なモデルの一つである。我々はDDCモデルを使用して、オーバル細胞増殖を介した肝再生、修復における核内レセプターCAR (constitutive active/androstane receptor) の役割について検討した。【方法】10週齢の雄の野生型マウス(WT)、CARの遺伝子欠損マウス(KO) に0.1%DDC添加食(DDC diet)をそれぞれ2、7および14日間摂食させて検討を行った。【成績】WTにおいてDDC dietはCYP2B10のmRNAを誘導し、CARの核内移動引き起こし、DDCによるCARの活性化が確認された。DDC dietはWTで肝障害、門脈域周囲にA6陽性の細胆管反応を引き起こすが、CARKOでは起こさなかった。レーザーマイクロダイセクションおよびリアルタイムPCRを用いて、DDC diet食餌後のWTマウス肝での門脈域周囲でオーバル細胞の特異的マーカーEpCAM、TROP2のmRNAの誘導を認め、オーバル細胞増殖を確認した。DDCにより誘導される肝障害はフェノバルビタールのようなCARの誘導剤と異なり、門脈域周囲で肝細胞の肥大、ポルフィリン沈着、炎症などを起こすことにより、オーバル細胞増殖を引き起こしている可能性が示唆された。【結論】CARはDDCにより誘導される肝障害、肝前駆細胞であるオーバル細胞増殖を介した肝再生や修復において重要な役割を担っている可能性が示唆された。(当研究は、NIEHS/NIH/USAの根岸正彦博士の研究室で行われた。)
索引用語 CAR, 肝前駆細胞