セッション情報 ワークショップ8(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

肝疾患と幹細胞-炎症、再生、発癌まで-

タイトル 肝W8-4:

Noncanonical Wnt経路による肝幹/前駆細胞の分化制御

演者 幾世橋 佳(東京医歯大・消化器病態学)
共同演者 柿沼 晴(東京医歯大・消化器病態学DELIMITER東京医歯大大学院・分子肝炎制御学), 渡辺 守(東京医歯大・消化器病態学)
抄録 【目的】Wnt経路は、様々な臓器の幹細胞の分化/増殖に関与しているものの、Noncanonical Wnt経路が肝幹/前駆細胞にいかなる機能を有するかについては未だ不明である。本研究では、マウス胎仔肝臓由来の肝幹/前駆細胞の分化におけるNoncanonicalWnt経路の機能に関して検討を行った。
【方法】Noncanonical Wnt経路のリガンドとして代表的であるWnt5aに着目し、Wnt5a欠損マウスを用いて 胎生期肝臓をin vivoで解析した。次に、野生型マウス胎仔肝臓から初代肝幹/前駆細胞を分離、培養し、肝細胞分化誘導系および胆管様細胞誘導系におけるWnt5aの機能を解析した。さらに、肝前駆細胞株(HPPL)を用いた胆管分化モデルで、Wnt5aおよびその下流分子の機能を解析した。
【成績】Wnt5a欠損マウスの胎仔肝臓では、CK19、HNF1βで染色されるprimitive bile ductal structureの数が野生型と比較して有意に増加し、胆管の管腔構造形成が促進されていることが示された。初代肝幹/前駆細胞の肝細胞分化誘導系では、Wnt5aを添加すると肝細胞成熟化マーカーの一部に発現上昇を認めた。胆管様細胞誘導系においては、Wnt5aによりbranching structureを呈するコロニーの形成遅延を認めた。HPPLを用いた胆管分化モデルにおいてもWnt5aを添加すると、胆管様構造の数と径が有意に減少した。Wnt5a下流分子について検討すると、Dlk陽性初代肝幹/前駆細胞にCalmodulin-dependent protein kinase 2(CAMK2)のリン酸化蛋白を検出した。さらにHPPLの胆管分化モデルでCAMK2活性を阻害すると、胆管様構造の数と径が有意に増大することから、CAMK2活性が胆管への分化を抑制することが示された。
【結語】Noncanonical Wnt経路は肝幹/前駆細胞の胆管細胞への分化・成熟を抑制することが示唆された。
(謝辞:東大分生研宮島篤先生、札幌医大谷水直樹先生、大阪大学菊池章先生)
索引用語 肝幹細胞, Wnt5a