セッション情報 ワークショップ8(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

肝疾患と幹細胞-炎症、再生、発癌まで-

タイトル 消W8-10:

C型肝炎ウイルスによる肝癌幹細胞制御機構の解析

演者 足立 雅之(慶應義塾大・消化器内科)
共同演者 高石 官均(慶應義塾大・腫瘍センター), 日比 紀文(慶應義塾大・消化器内科)
抄録 【目的】癌においては、自己複製能と限られた範囲での分化能を有する癌幹細胞(cancer stem cell)と呼ばれる分画が存在し、腫瘍形成能・抗癌剤や放射線に対する抵抗性や転移に重要な役割を果たしていると考えられる。肝癌においてはCD133, Side Population, CD90, EpCAMが肝癌幹細胞のマーカーであることが報告されているが一定の結論は出ていない。一方、HCV感染の肝癌における癌幹細胞に対する役割は明らかではない。本研究では、肝癌細胞株における癌幹細胞分画の同定と、それに対するHCV感染の関与を検討した。【方法・成績】肝癌細胞株Huh7、高HCV 複製感受性株Huh7.5細胞、HCV subgenomic repliconを発現するHuh-FL細胞を用い、Side Population (SP)およびCD133、EpCAM、CD90, CD13のFACS解析を行った。Huh7において、SP分画にはTotal、Main Population (MP)分画に比べてCD133陽性細胞が多く観察された。CD133陽性SP、CD133陽性MP, CD133陰性SPの各細胞集団を解析したところ、CD133陽性SP分画のみが造腫瘍造能やSphere形成能を持ち、癌幹細胞としての性質を持つ細胞集団であった。次に、Huh7.5細胞およびHCV subgenomic repliconを発現するHuh-FL細胞用いて同様の検討を行ったところ、Huh-FL細胞ではHuh7.5細胞に比べてSP細胞分画の割合が多く、Sphere形成能も増加した。これらの変化は、Interferon によるウイルスゲノム排除によりHuh7.5と同等に減少した。さらに、Huh7細胞にHCV-core蛋白を発現するアデノウイルスを導入したところ、同様にSP細胞分画の増加、Sphere形成能の増加が観察された。これらの過程には、HCVによるHistone deacetylase (HDAC)活性の増加が関与し、HDAC阻害剤によりSP細胞分画、Sphere形成能の低下が観察された。【結論】以上の結果からHCVウイルス感染が肝癌幹細胞の維持に重要な役割を果たし、肝炎ウイルスによる肝発癌の一機序として重要であることが示唆される。
索引用語 HCV, 癌幹細胞