セッション情報 |
ワークショップ8(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)
肝疾患と幹細胞-炎症、再生、発癌まで-
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タイトル |
肝W8-11:肝癌幹細胞に対するエピジェネティック治療の可能性
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演者 |
鈴木 英一郎(千葉大大学院・腫瘍内科学) |
共同演者 |
千葉 哲博(千葉大大学院・腫瘍内科学), 横須賀 收(千葉大大学院・腫瘍内科学) |
抄録 |
【目的】ポリコーム遺伝子群(PcG)は、PRC1およびPRC2の2つの複合体を形成し、ヒストン修飾などのエピジェネティックな遺伝子発現制御を通して、正常幹細胞および癌幹細胞の自己複製制御分子として機能する。PRC2の主要な構成分子であるEZH2は、ヒストンH3K27のメチル化酵素活性を有し、PcG複合体による転写抑制の起点となるが、肝癌幹細胞における機能は十分に理解されていない。そこで今回、EZH2の機能解析を行うとともにEZH2の機能阻害による肝癌幹細胞に対するエピジェネティック治療の可能性を検証した。【方法】レンチウイルスを用いてEZH2をノックダウンした肝癌細胞のstable transfectantを作成するとともに、トリメチル化ヒストンH3K27の阻害剤である3-deazaneplanocin A (DZNep)処理を行い、培養系におけるコロニーアッセイとNOD/SCIDマウスを用いたin vivoの解析を行なった。【結果】EZH2をノックダウンしたHuh1細胞およびHuh7細胞のstable transfectantと同様に、DZNep処理した肝癌細胞では、dose-dependentに増殖活性が低下するとともに、フローサイトメトリー解析にてEpCAM陽性分画、CD133陽性分画の有意な減少がみとめられた。DZNep処理したこれらの細胞では、sphere形成能およびreplating活性の抑制をみとめた。DZNepまたは5-FUを投与した xenograft modelでは、いずれの場合においても抗腫瘍効果が観察されたが、腫瘍由来のEpCAM陽性細胞、CD133陽性細胞はDZNep処理により明らかに減少したのに対して、5-FU投与ではむしろenrichされていた。【結論】EZH2は肝癌幹細胞の維持に重要な役割を果たしており、低分子化合物を用いたEZH2の機能阻害により、これらの細胞の自己複製能、腫瘍形成能が著しく阻害された。EZH2の治療標的分子としての有用性ならびにDZNepによる新規の肝癌治療法としての可能性が示された。 |
索引用語 |
肝癌幹細胞, EZH2 |