セッション情報 ワークショップ9(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

我が国の肝移植の現状と将来

タイトル 肝W9-1:

スコアリングシステムによる劇症肝炎肝移植ガイドラインを用いた治療効果判定への応用

演者 内木 隆文(岐阜大・消化器病態学)
共同演者 永木 正仁(岐阜大・消化器病態学), 森脇 久隆(岐阜大・消化器病態学)
抄録 【はじめに】2008年にスコアリングシステムによる新たな劇症肝炎肝移植ガイドラインを提示した.この最大の特徴はスコアリングにてその時点での予後予測が可能な点である.今回この特徴を生かし,重症肝炎から劇症肝炎に至る経過の予後予測ならびに治療効果判定として有用かどうか検討した.【方法と成績】対象は2004年以降当科にて経験した劇症肝炎10症例(平均年齢54.3歳,男性:女性3:7,FHA:FHS5:5,病因HBV5例,HAV1例,AIHおよび不明4例,生存4例(うち肝移植1例):死亡6例),および急性肝炎重症型8例(平均年齢40.8歳,男性:女性5:3,病因HBV2例,HAV1例,AIH,薬剤性および不明5例,生存7例:死亡1例).脳症発症時では,劇症肝炎生存例の平均は2.7(2-4)点であり死亡例の平均は5.4(0-7)点であり正診率は90%となり良好な結果が得られた.生存と判定され,死亡した症例は,血漿交換時のARDSによる合併症死と考えられた.また急性肝炎重症型においてPT40%以下の時点で移植基準を適応すると,全体の平均は2.5(0-4)点,移植基準を満たす症例はなかった.急性肝炎重症型における唯一の死亡例は,経過中に大動脈解離を呈した重篤な合併症死であった.次いで,スコアリングを経過として治療開始5日間まで検討すると,劇症肝炎診断時より死亡例は殆どの症例が5点を下回るほど回復することはなく,また生存例も同様に5点を上回ること無く推移していることが観察された.【考察】当科における検討では,急性肝炎重症型における検討では,脳症を認めない診断時点において有用な予後予測として活用でき,また劇症肝炎例の経過の検討においても,判定を明らかに逸脱することなく推移することが観察され,併せて考えれば,脳症出現以前からの継続的な使用により早期の移植準備が可能であると考えられた.
索引用語 劇症肝炎, 肝移植