セッション情報 ワークショップ9(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

我が国の肝移植の現状と将来

タイトル 肝W9-3:

当センターで改正臓器移植法施行後に脳死肝移植登録をおこなった小児症例の検討

演者 垣内 俊彦(国立成育医療研究センター)
共同演者 笠原 群生(国立成育医療研究センター), 松井 陽(国立成育医療研究センター)
抄録 【緒言】平成22年7月に改正臓器移植法が施行され、本人の臓器提供の意思が不明な場合も、家族の承諾があれば臓器提供できるようになり脳死下の臓器提供は増加している。【目的】当センターで脳死肝移植登録をおこなった小児末期肝不全患者を検討し今後の動向を考察する。【対象・方法】当センターでの14例において、移植適応疾患名、脳死登録優先理由、PELDスコア、緊急性、転帰について評価した。【成績】肝移植適応疾患は劇症肝不全5例、胆道閉鎖症3例、原発性硬化性胆管炎2例、原発性過蓚酸尿症2例、Caroli病1例、メチルマロン酸血症劇症化1例であった。家族の希望があれば脳死肝移植登録を実施したが、優先登録理由として、両親いずれかに医学的理由でドナー不可5例、母親が産褥期1例、肝腎同時移植が必要2例、原病再発に伴うリスク回避2例であった。PELDスコアは劇症肝不全・胆道閉鎖症で11点~41点と高値であった。緊急性は劇症肝不全、メチルマロン酸血症劇症化では全例とも9点、Caroli病では6点、胆道閉鎖症、原発性硬化性胆管炎では6点または3点であった。劇症肝不全、、胆道閉鎖症原発性過蓚酸尿症の各1例で脳死ドナーが出現し、脳死肝移植となった。前2例では分割肝移植による移植であった(体重33kg:右葉移植、体重6.7kg:外側区域移植)。残り7例は生体肝移植を実施し、4例は待機中である。脳死肝移植となった原発性過蓚酸尿症の1例と生体肝移植を施行した劇症肝不全の1例を失った。【結論】小児では両親に疾患を認める場合、また肝腎同時移植の必要な疾患では脳死登録が好ましい。脳死下臓器提供が増加傾向にあり、小児では分割肝利用が可能であることから臓器提供を受けられる可能性が高い。脳死肝移植は末期肝不全に対して生体肝移植と平行して進めてゆくべきである。
索引用語 改正臓器移植法, 小児