セッション情報 ワークショップ9(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

我が国の肝移植の現状と将来

タイトル 外W9-4:

小児期肝疾患に対し肝移植を施行した症例の長期成績

演者 大野 康成(信州大・外科)
共同演者 池上 俊彦(信州大・外科), 宮川 眞一(信州大・外科)
抄録 【はじめに】わが国で小児に対する生体肝移植を開始して20年が経過した。治療成績も向上し長期生存例が増加している。今回、長期経過後の合併症について検討した。【対象・方法】当科で肝移植が施行された286例中、小児(18才未満)肝移植症例120例を対象に、術後5年以降の合併症、予後についてretrospectiveに検討した。【結果】原疾患は胆道閉鎖症87例、劇症肝炎15例、アラジール症候群5例、NBNC肝硬変3例、代謝性疾患3例、乳児肝炎2例、その他5例で、移植時年齢は4ヶ月~16歳(中央値16ヶ月)であった。NBNC肝硬変症例とアラジール症候群の計2例が初回肝移植後8.1年と5.5年で再移植を受けたが、NBNC肝硬変例は再移植後に肝不全を合併し初回移植から13年後に死亡した。その他に原因不明の肝炎、C型肝硬変、HCCの再発、PSCの再発で術後5年以降に計5例が死亡した。小児肝移植例全体の1年、5年、10年、15年、20年累積生存率は、それぞれ91%、88%、86%、84%、84%であった。5年目以降に認められた合併症として、門脈血栓症、胆管狭窄、原因不明の肝炎、悪性新生物があった。門脈血栓症の合併は5例で、4例に消化管出血があった。胆管空腸吻合部狭窄は5例でいずれも肝内結石を合併し胆管炎を繰り返したため、PTBDまたは、ダブルバルン内視鏡による治療を行い改善した。原因不明の肝炎が4例に発症し、難治性の2例は、治療に奏功せず死亡した。慢性骨髄性白血病が1例で発症し現在治療中である。また、コンプライアンス低下による肝機能障害が6例で認められ、発症診断時年齢は18.4歳(8.8~20.9歳)であった。全例服薬指導により肝機能は改善した。【まとめ】小児肝移植の長期予後は20年生存率84%と良好であるが、移植術後5年以上を経ても門脈血栓症、胆道合併症、原因不明の肝炎、悪性新生物といった生命予後あるいはQOLに影響する合併症とコンプライアンアス低下があり、長期外来経過観察の重要性が示唆された。
索引用語 肝移植, 術後長期合併症