セッション情報 ワークショップ9(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

我が国の肝移植の現状と将来

タイトル 消W9-5:

腹腔鏡補助での新しい取り組み:上腹部正中切開でのハイブリッド生体肝移植ドナー&レシピエント手術

演者 江口 晋(長崎大大学院・移植・消化器外科学)
共同演者 高槻 光寿(長崎大大学院・移植・消化器外科学), 兼松 隆之(長崎大大学院・移植・消化器外科学)
抄録 生体肝移植(LDLT)ドナー手術の低侵襲化は、安全性を担保した上で追求すべき課題である。特に肝右葉採取術は女性の場合が多く、整容性も望まれる。当科ではLDLTドナー肝右葉採取術の逆T字切開→右腹直筋外縁までの切開→右肋弓下12cm切開と縮小してきた。しかし、右肋弓下切開では肝静脈根部が遠く、グラフト摘出困難であったため、2010年4月より倫理委員会承認のもと、HALS併用で上腹部12cm正中切開での手術を開始。また、ドナー手術の経験より、レシピエントでも腹筋を切離せず同術式を開始したので、それらの成績を述べる。患者:2011年2月までのLDLTドナー142例中、上記手術を施行したドナー肝右葉採取6例(左葉採取は除外)、レシピエント9例(MELD中央値15)。ドナー手術は上腹部正中8cm切開開腹後、臍部12mm、右側腹部5mmポート留置。気腹下にHALS右葉脱転後、創を12cmまでに延長、wound protector ML、オムニトラクトを装着。以後は大開腹と同様。レシピエント手術では、sealing deviseを用いる以外同様で、HALS下肝授動後、正中12-15cmまで開腹し、肝全摘。implantationは大開腹と同様。結果:以前のドナー肝右葉採取術10例と比較すると、手術時間は若干延長していたが(待機時間も含む。401 vs. 473 min)、出血量、入院期間に有意差なく、初期グラフト機能も遜色なかった。 レシピエントでも脾摘出併施7例、肝単独2例に同術式を施行し、左葉グラフト8例、右葉グラフト1例を移植。1例吻合部が深く、逆L型切開にコンバートしたが、他例は問題なくimplantを施行可(中央値:出血量3,940g、手術時間741分)。レシピエント1例TMA、門脈血栓症にて死亡。結語:LDLTドナーでの上腹部正中切開ハイブリッド肝右葉採取術は、通常開腹と遜色ない安全性、確実性を有し、肝臓外科専門医が行う事で、今後の標準術式となりうる。また、同術式はLDLTレシピエントにも選択的に適応可能である。
索引用語 生体肝移植, 腹腔鏡