セッション情報 ワークショップ9(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

我が国の肝移植の現状と将来

タイトル 肝W9-7:

生体肝移植後C型肝炎に対するIFN治療の予後推測におけるHCV遺伝子変異、IL28B遺伝子多型測定の有用性の検討

演者 杉本 和史(三重大大学院・消化器内科学)
共同演者 白木 克哉(三重大大学院・消化器内科学), 竹井 謙之(三重大大学院・消化器内科学)
抄録 【目的】現在HCV関連肝疾患に対する肝移植が最も多い。移植後のグラフト肝にはほぼ全例にHCVが再感染し、肝炎の進展は極めて急である。予後改善にはC型肝炎再発への対策が不可欠であるが、副作用や、拒絶の問題もあり、、治療指針には一定の見解がない。そこで今回我々は当院における移植後C型肝炎に対するIFN治療の有用性について遺伝子変異、ドナー、レシピエント双方のSNPに注目し検討した。【方法】これまで当院で生体肝移植を施行されたC型肝炎症例を対象とし、術後の肝炎再発を血清学的、組織学的に検討した。再発症例にはIFN治療を施行した。HCVコア、ISDRの変異をdirect sequenceにより解析し、IL28B上流のSNP(rs8099917)をGENECUBE(Toyobo)により解析した。【成績】対象症例は男性24例、女性13例の計37症例であり、HCV genotypeは不明の1例を除き全例が1bであった。耐術症例29例では術後にHCV-RNAが陰性化した1例を除き28例にHCVの再燃が認められた。24例においてIFN治療が開始され、副作用、拒絶反応、HCC再発などで9例が中止した。経過中に10例(男性8例、女性2例)でEVRが得られ、最終的に9例(男性7例、女性2例)でSVRが得られた。男性ではコア70の変異(-)症例は5/8でEVRが得られ、91変異(-)では6/7にEVRが得られたが、女性では70変異(-)でのEVR率は2/6、91変異(-)では1/4であった。IL28B SNP解析結果はレシピエントがMajorアレル(T/T)の場合、男性では7/11にEVRが得られ、女性でも3/5にEVRが得られた。男女いずれにおいてもminorアレル(T/G,GG)のレシピエントではEVRは得られなかった(0/6)。またレシピエントがmajorでドナーがminorであった2例はEVRであったのに対し、レシピエントがminor、ドナーがmajorの2例はいずれもNRであり、ドナーのSNPの予後に対する影響は少ないと考えられた。【結語】HCV遺伝子変異、レシピエントのSNP解析は移植後IFN治療の予後推測に有用であると考えられた。
索引用語 C型肝炎, 肝移植