セッション情報 ワークショップ9(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

我が国の肝移植の現状と将来

タイトル 肝W9-8追1:

生体肝移植後の抗ウイルス療法の現状と問題点

演者 永濱 裕康(熊本大大学院・消化器内科学)
共同演者 阿曽沼 克弘(熊本大大学院・移植外科学), 佐々木 裕(熊本大大学院・消化器内科学)
抄録 【背景と目的】生体肝移植(LDLT)後のC型肝炎症例では、インターフェロン(IFN)治療によるSVR率の低さが問題となる。またHBc抗体陽性ドナーからのLDLT症例では、まれにB型肝炎の再燃が問題となる。今回我々はLDLT症例に対する肝炎対策としての、C型肝炎症例に対するインターフェロン投与およびHBc抗体陽性ドナーからのLDLT症例に対するHBIG投与について、その有効性ならびに問題点について検討を行なった。【対象と方法】IFN療法の導入を行なったLDLT症例35例のうち、1型高ウイルス量に対しPEG IFN+RBV療法で48週間を越えて長期投与を行なった29例(投与終了23例、投与中6例)について検討を行なった。またHBc抗体陽性ドナーからの移植症例については、HBVキャリアへの移植を除く26例について検討を行なった。【結果】C型肝炎に対するIFN療法については、効果判定が可能であった20例中SVRは8例(40%)であった。HCV RNAの陰性化時期とSVRには関連は認められなかった。Adherenceについては、SVR症例でPEG IFNの投与開始量とHb値がnonSVR症例より有意に高く、またリバビリンの体重あたりの総投与量が高い傾向にあった(p=0.06)。またHBc抗体陽性ドナーからのLDLTでは、HBIG投与中に5例にde novo B型肝炎を認め、3例ではescape mutantが確認された。【考察、結語】C型肝炎でのIFN療法では、SVRを得るためにはPEG IFNとリバビリン各々の総投与量を多くする工夫が必要であり、副作用対策を積極的に行いつつ治療期間を延長することが重要と考えられた。HBc抗体陽性ドナーからのLDLT症例では、HBIG投与だけではHBs抗原のescape mutantの出現により、再活性化を完全には阻止出来ない場合があり、HBs抗体の力価が維持されている症例においても、escape mutant の出現を念頭に入れ、HBVDNA量の測定ならびに核酸アナログ製剤投与を併せて行う必要があると考えられた。
索引用語 肝移植, 抗ウイルス療法