セッション情報 ワークショップ9(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

我が国の肝移植の現状と将来

タイトル 外W9-9:

肝移植成績向上のための取り組みと将来展望

演者 丸橋 繁(大阪大大学院・消化器外科学)
共同演者 永野 浩昭(大阪大大学院・消化器外科学), 森 正樹(大阪大大学院・消化器外科学)
抄録 肝移植における課題として、原疾患としてはC型ウイルス肝硬変、肝細胞癌、ABO血液型不適合移植、技術的には右葉グラフト静脈再建、過小グラフト、胆管再建、動脈再建などが挙げられるが、様々な工夫により各々成果を挙げてきた。さらに、肝移植術後合併症や免疫抑制剤の副作用、肝生検病理診断などの経験も蓄積され、肝移植術後成績は年々改善している。一方で、我が国における脳死肝移植症例は依然少なく、アロケーションシステム整備、マージナルドナーの活用などを欧米の経験を参考に進めていく必要がある。
これらの背景のもと、次世代の肝移植の成績向上を目指すための当科での取り組みと着目すべき問題点について検討した。

(1) 脳死マージナルドナーに関する考察
教室で行われた脳死肝移植12例におけるグラフト障害スコア(LPI risk)は1.8-14.3であり、このうち1例(LPI risk =14.3)でグラフト機能障害が遷延している。マージナルドナーをどのように扱うか、情報を共有し検討することが重要と考える。
(2) C型ウイルス肝硬変に対する肝移植
ステロイドフリー免疫抑制法とpreemptive-HCV治療の有用性について報告してきた。これまで教室で行ったHCV(+)レシピエント42例で、SVR 42.1%、F3以上の症例2.3%と良好な成績を得ている。
(3) 胆管合併症の少ない生体肝移植
教室で提唱した吻合法(open-up法)、ドナー、レシピエント手術の工夫などにより、胆管吻合部狭窄は104例中9例(8.7%)と良好な成績を得ている。
(4) 急性拒絶反応の非侵襲的診断法の開発
肝生検組織、末梢血、胆汁を用いたグラフト肝障害診断法の検討を行ってきた。同定された分子生物学的あるいは蛋白マーカーの臨床応用を目指している。
(5) 晩期合併症に関する考察
移植後6か月以上生存した患者84例のうち、移植後3年以上経過してから発症した晩期合併症は15例(17.9%)にみられ、HCC/PBCなどの原病再発と免疫抑制剤関連の合併症が大部分であった。晩期合併症の早期発見のため、定期的検査やプロトコール肝生検の重要である。
索引用語 肝移植, 成績