セッション情報 |
ワークショップ9(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)
我が国の肝移植の現状と将来
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タイトル |
消W9-10:肝移植の治療成績向上を目指した我々の新しい取り組みと展望
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演者 |
吉住 朋晴(九州大大学院・消化器・総合外科学) |
共同演者 |
調 憲(九州大大学院・消化器・総合外科学), 前原 喜彦(九州大大学院・消化器・総合外科学) |
抄録 |
【目的】1. 過小グラフト症候群(SFSG)の予防、2. 肝癌への移植基準拡大、3. ABO不適合肝移植の新たなレジメン開発、4. IL28B周囲の遺伝子多型(SNP)解析によるC型肝炎再発後PEG-インターフェロン(IFN)療法効果予測、5. カルシニューリン阻害剤(CNI)長期投与例の腎障害に対するミコフェノール酸モフェチル単剤療法(MMF mono)に取り組んできた。これらの効果を検討する。【方法】成人間生体肝移植329例1) 脾摘の効果:過去の症例で作成した予後予測式から、術前にSFSGの危険性が高いと予測された37例で脾摘の短期予後に与える影響を判定。2) 肝癌の移植適応基準:従来の腫瘍径とPIVKA-IIからなる九大基準に末梢血好中球-リンパ球比(NLR)を加えた新基準の予後予測精度を検討。3) 動注、門注なしのリツキサンレジメンの効果を検討。4) SNP解析による治療効果予測を検討。5) MMF monoの腎機能改善効果を検討。【成績】1) 移植後6ヶ月生存率は脾摘あり群(n=19) 94.4%、なし群(n=18) 72.2%と脾摘による生存率改善傾向を認めた(p=0.07)。2) 移植後5年無再発生存率はNLR<3+九大基準内群(n=91) 91%、NLR>3+九大基準内群(n=43) 67%、NLR>3+九大基準外群(n=3) 0%であった(p=0.001)。3) リツキサンレジメンの移植後生存率は100%であった。4) SVR率はドナー・レシピエントともにSNP(-)(n=18)で56%、一方がSNP(+)(n=10)で11%、ともにSNP(+) (n=5)で0%であった(p=0.005)。5) MMF mono開始3ヶ月後の推参糸球体濾過量(eGFR, ml/min/1.73m2)は開始前に比し、良好であった(43.1 vs 33.5. p=0.02)。【結論】SFSG高危険群への脾摘で短期予後は改善しうる。NLRの導入で九大基準による肝癌再発の予測精度は向上した。リツキサンレジメンがABO不適合肝移植の標準的治療法となりうる。SNP解析がHCV症例でのドナー選定の要因となりうる。客観的免疫能評価によるMMF mono適応の拡大が、治療成績向上につながる可能性がある。 |
索引用語 |
肝移植, 課題 |