セッション情報 ワークショップ9(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

我が国の肝移植の現状と将来

タイトル 肝W9-12:

ドナー由来活性化リンパ球細胞療法による生体肝移植後の敗血症予防

演者 田代 裕尊(広島大大学院・先進医療開発科外科学)
共同演者 茶山 一彰(広島大・消化器・代謝内科), 大段 秀樹(広島大大学院・先進医療開発科外科学)
抄録 肝移植後の敗血症はその予後を左右する重篤な術後合併症の一つである。広島大学病院では、ドナー由来活性化リンパ球細胞療法を肝細胞癌やC型肝硬変に対する肝移植において再発予防目的で施行し、このドナー活性化リンパ球が、抗腫瘍・抗ウイルス作用を併せ持つことを報告してきた。また、リンパ球は、殺細菌作用も示すことが報告されている。そこで今回、肝移植症例においてこの細胞療法が肝移植後敗血症の発症を抑制するか否か検討した。対象:広島大学病院で、2004年から2010年までに経験した胆管・胆管吻合を行った肝移植症例114例を対象とした。方法:このドナー由来活性化リンパ球細胞療法では、ドナー肝摘出後の潅流液より得られたリンパ球をIL-2で活性化し、移植後3日目にレシピエントに点滴靜注した。肝移植114例の内訳は細胞療法を行った24例(A群)と細胞療法を施行しなかった90例(B群)であり、移植後3ヶ月までの敗血症を後ろ向きに調査した。A群における背景因子では、高齢者、HCC症例が有意に多くを占め、さらにMELDスコアーも有意に低値であった。そこで両群の背景因子の差によるバイアスを避けるため,プロペンシティスコア分析を用いてのone-to-one match法で両群から21症例ずつを抽出した。結果:プロペンシティスコア分析前では、A群(24例)において術後敗血症の発症率は4.2%とB群(90例)の28.8%に較べ有意に低値であった。さらにプロペンシティスコア分析後,両群の背景因子に有意差は認めず、A群(21例)において術後敗血症の発症率は4.8%とB群(21例)の28.6%に較べ有意に低値であった。考察:術後敗血症は、生体肝移植の予後を不良とするため、術後の感染対策は極めて重要であり、ドナー由来活性化リンパ球療法はその有望な一つの敗血症予防対策になる可能性が示唆された。
索引用語 生体肝移植, 細胞療法