セッション情報 ワークショップ10(消化器病学会)

膵の再生と線維化-progenitor cell・stellate cellの役割-

タイトル 消W10-1:

幹/前駆細胞マーカーLGR5のヒト膵における局在と膵再生

演者 洪 繁(名古屋大大学院・消化器内科学)
共同演者 後藤 秀実(名古屋大大学院・消化器内科学)
抄録 【目的】ヒトの膵はこれまで、一旦組織が障害されると膵再生分子機構が存在せず、組織・細胞は再生しないと考えられてきたが、我々は自己免疫性膵炎のステロイド治療の前後に膵機能及び組織検査を繰り返すことにより、ヒトの膵組織でも再生分子機構が存在し、CD133陽性細胞が膵再生に関わっていることを明らかにした 。また最近の消化管再生医療の進歩によりCD133の上位の幹/前駆細胞マーカーとしてLGR5が同定されたが、膵臓での本マーカーの発現及び局在については知られていない。そこで本研究では、幹/前駆細胞マーカーLGR5の正常及び膵炎における発現・局在を明らかにすることで膵再生との関わりについて明らかにすることを目的とした。【方法】膵以外の疾患のために合併切除された膵組織及びアルコール性慢性膵炎の膵組織を用いた。組織は前駆細胞マーカーに対する特異抗体を用いて免疫組織化学染色を行った。【結果】抗LGR5抗体を用いた免疫組織化学染色では、LGR5陽性細胞はヒトの膵では極めて稀な細胞として存在していた。LGR5陽性細胞は、膵腺房細胞内、導管細胞内、腺房と腺房の間に存在する星細胞、ランゲルハンス島内にLGR5陽性細胞を認めたが、いずれも陽性細胞の頻度は極めて低く、発現細胞は非常に稀であった。膵腺房細胞内に存在するLGR5陽性細胞は抗アミラーゼ抗体で染色されなかった。ランゲルハンス島内のLGR5陽性細胞はインスリン、グルカゴンなどの内分泌ホルモン陰性であり、これらはいずれも分化した腺房細胞や内分泌細胞とは違う細胞集団であることがあきらかとなった。アルコール性慢性膵炎組織ではLGR5陽性細胞の発現頻度は上昇していた。【結論】本研究で、ヒト成人膵においては、腸管の幹/前駆細胞であるLGR5陽性細胞が存在しており、分化細胞マーカーが陰性であることからこれらの細胞は未分化な幹/前駆細胞である可能性が考えられた。これらの細胞は膵再生に関わっていることが推察された。
索引用語 膵再生, LGR5