セッション情報 |
ワークショップ10(消化器病学会)
膵の再生と線維化-progenitor cell・stellate cellの役割-
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タイトル |
消W10-2:ヒトおよびラット膵炎における再生の研究-progenitor cellの関与-
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演者 |
吉田 仁(昭和大・消化器内科) |
共同演者 |
山崎 貴久(昭和大・消化器内科), 井廻 道夫(昭和大・消化器内科) |
抄録 |
【背景】急性膵炎における膵再生は種々の薬物や手術によりラットモデルで検討され,浮腫性膵炎(AEP)では重症度に応じ再生は増進し,壊死(ANP)・出血性膵炎(AHP)では再生が細胞別に時間差を生じつつ推移することを教室の先駆者らが報告した.再生の担い手候補にprogenitor cell(PC)が挙げられ,PCがラットのみならずヒト膵でも出現し得ることを著者らが報告してきた.【目的】ヒトおよびラット膵炎で“PCはどう出現しいかに作動するか?外分泌細胞の再生に寄与するか?”を検討した.【方法】本学動実委承認のもとSD系雄性ラットAEP群にはcaerulein(CAE) 25μg/kgを4回腹腔内投与(ip)し,Wistar系雄性ラットANP群には低蛋白食飼育後DL-ethionine(ET) 200mg/kgを4回ipした.患者同意のもとprednisolone(PSL)内服治療前・中のAIP膵生検を行った.PCNA抗体を用いG1後期~S期の細胞核を染色し,陽性/全膵腺房細胞×100(%)をlabeling index (LI)とした.PCはPDX-1抗体(大阪大学第一内科金藤先生提供)を用い,膵外分泌幼若細胞はHES-1抗体(東レ医薬研究所須藤先生提供)を用い免疫組織化学的に同定した.【成績】ラットAEP:血中amylase値はCAE投与6時間で最大値に達し,組織学的には腺房細胞液胞化と浮腫が主体であった.LIは120時間で最大に達した.ラットANP:腺房細胞壊死と炎症細胞浸潤が主体でLIはET投与8日以後で最大となった.ヒトAIP:PSL治療前は腺房細胞脱落と炎症細胞浸潤が主体,治療中は腺房細胞出現と炎症細胞消退を認めた.PDX-1:AEPではラ氏島領域に主な陽性像を,ANPではそのほか導管様細胞や一部腺房細胞に陽性像を,AIPでは導管様細胞に陽性像を認めた.HES-1:陽性像は不明瞭であった.【考察】ヒトAIPの再生は脱分化により出現するPCが関与すると推定される.ラットAEPではPCを介さずに腺房細胞は再生し,一方,ANPの再生には残存膵細胞の脱分化により誘導され得るPCの関与が示唆される.【結論】本研究からヒト,ラットなど動物種に関係なく膵炎の程度により再生が異なる可能性が推定される. |
索引用語 |
膵再生, progenitor cell |