セッション情報 |
ワークショップ10(消化器病学会)
膵の再生と線維化-progenitor cell・stellate cellの役割-
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タイトル |
消W10-3:膵progenitor cellは通常型膵癌の起源となり得るか-遺伝子改変マウスを用いたアプローチ-
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演者 |
伊地知 秀明(東京大大学院・消化器内科学) |
共同演者 |
多田 素久(千葉大大学院・腫瘍内科学), 小池 和彦(東京大大学院・消化器内科学) |
抄録 |
【目的】我々は、膵臓上皮特異的Kras活性化+TGF-βII型受容体(Tgfbr2)ノックアウトにより、著明な間質の増生を伴う分化型管状腺癌を呈する膵発癌モデル(PKF)を樹立し報告したが、このモデルでは膵癌の起源細胞の同定は不可能であった。通常型膵癌は膵管由来と考えられてきたが、腺房・内分泌細胞からの癌化を示唆する報告もある。Nestinは、神経系progenitor cellのmarkerとして知られるが、膵外分泌系のprogenitor cellでの発現も報告されている。我々は、成熟期におけるNestin陽性細胞が通常型膵癌の起源となり得るか、実験的な証明を試みた。【方法】Nestinプロモーター下に、creERT2によりTamoxifen投与でKras活性化+Tgfbr2ノックアウトを誘導できるマウス(NKF)を作製した。このマウスの生後8週齢以後にTamoxifenを投与し、さらに10週後、その表現型を解析した。得られた膵病変を先行のPKFと比較検討し、各種免疫染色を行った。またNes-creERT2;ROSA26r (NR)というマウスも作製し、生後8週齢以降にTamoxifenを投与しbeta-galactosidase染色にてNestin陽性細胞の膵内分布動態を検討した。【成績】PKFモデルでは、著明なacinar-ductal metaplasiaを伴い、全膵臓が腫瘍化した。NKFでは、正常な膵腺房構造が保たれ、よりfocalにPanIN様の前癌病変~分化型管状腺癌が出現し、acinar-ductal metaplasiaは目立たなかった。NKFの膵病変はK19陽性であり、リン酸化ERK、Hes1の核内染色が認められた。NRのbeta-galactosidase染色にて膵内のごく限局した腺房・内分泌細胞にNestin陽性細胞の分布がみられた。【結論】成熟期においてNestin陽性のprogenitor状態を保っている細胞が、通常型膵癌の起源細胞となりうることが証明された。NKFのAdult-onsetかつfocalな発癌形式はPKFよりもヒト膵癌の発癌状況に類似し、通常型膵癌の発癌過程及び膵癌幹細胞研究における有用なツールと考えられた。 |
索引用語 |
膵癌, progenitor cell |