セッション情報 ワークショップ10(消化器病学会)

膵の再生と線維化-progenitor cell・stellate cellの役割-

タイトル 消W10-4:

エタノールは膵星細胞によるFractalkine sheddingを誘導し、慢性膵炎の病態形成に関与する

演者 中村 太一(九州大・病態制御内科)
共同演者 内田 匡彦(九州大・病態制御内科), 伊藤 鉄英(九州大・病態制御内科)
抄録 【背景と目的】これまでエタノールは膵星細胞(PSC)からのMMPs分泌を誘導し、組織のTurn overに寄与することが示唆されているが、臨床上は飲酒が膵線維化を促進し、相反する結果をもたらす。Fractalkineは様々な炎症性疾患のみならず慢性膵炎においても過剰な膵組織内発現および患者血中濃度の上昇が明らかとなっている。その分泌機構は膜からのsheddingという切断プロセスによって誘導されることが知られており、MMPsを含めた多種の酵素(sheddase)がsheddingに関与している。今回、我々はエタノールの炎症惹起作用についてFractalkine shedding機構に着目してin vitroでの検討を行った。【方法】膵腺房細胞、PSCをラットから分離、培養した。試薬は炎症刺激としてTNF-α、IL-1β、感染類似刺激としてLPS、Poly(I:C)、PKCの活性化基質であるPMA、飲酒刺激としてエタノールを用いた。阻害薬として各種PKC、MMPs、ADAMs、Cathepsin S阻害薬を使用した。Assayによる検討項目は、1.Realtime-PCR法を用いたsheddaseの発現、各種刺激によるFractalkineの発現、2.ELISA法を用いたFractalkineの分泌、である。【結果】最初にFractalkine分泌に必要なsheddaseのmRNA発現を腺房細胞とPSCで比較し、PSCが膵内sheddaseのmain sourceであることを確認した。そこで、PSCを炎症・感染・飲酒因子で刺激し、Fractalkineの誘導を検討した。炎症・感染刺激で濃度依存性の転写、分泌上昇を認め、一方でPMAおよびエタノールは、上記リガンドと同時に刺激することにより、転写を介さない分泌レベルでの相乗作用を認めた。その機序の一つとしてPKC経路を介したshedding機構の活性化が考えられたため、PKC阻害薬およびsheddase阻害薬を用いて抑制効果を検討した。これらの阻害薬による分泌抑制を確認し、これらの経路がPSCによるFractalkine分泌に関与することを明らかにした。【結論】エタノールはPSCのPKC-MMP経路を介したFractalkine shedding機構の活性化により慢性膵炎病態形成に関与する可能性がある。
索引用語 膵星細胞, エタノール