抄録 |
【目的】膵は調節性外分泌により消化酵素を分泌する。インターフェロン制御因子(IRF)2 KOマウスは、各種臓器異常により8ヶ月以内に死亡することが多いが、その膵腺房細胞では調節性外分泌が障害されていることを我々は明らかにした。急性膵炎の発症時には膵臓からの消化酵素の分泌が障害され、それがプロテアーゼの異所性活性化の誘因となる。そこで我々は、Irf2-/-マウスの膵と膵炎、再生、線維化との関連を検討した。【方法】Irf2+/-, Irf2-/-マウスの膵組織をHE染色や電子顕微鏡像にて検討した。更にLC3のウエスタンブロットによりオートファジーを定量的に評価し、活性化トリプシンを蛍光的に測定した。アポトーシスをTUNEL染色により、膵の再生を免疫組織学的に、線維化をシリウスレッド染色で評価し、膵星細胞の活性化をαSMAの免疫染色により評価した。また、セルレイン膵炎を誘発し、形態学的変化、血清中の消化酵素値、活性化トリプシン、オートファジー、膵星細胞の活性化を検討した。【成績】Irf2+/-膵, Irf2-/-膵では、HE染色上では明らかな異常はみられなかったが、電子顕微鏡観察ではIrf2-/-膵腺房には多くの細胞内空胞がみられ、LC3-IIの発現が亢進し、オートファジーが進行していた。活性化トリプシンもIrf2-/-膵では上昇しており、軽度の膵炎の進行が示唆された。アポトーシス及び再生機転はIrf2-/-膵で軽度亢進していたが、膵星細胞の活性化、線維化は認めなかった。更なる膵炎刺激として、セルレイン膵炎を誘発すると、両者に軽度から中等度の膵炎を認め、血清膵酵素、活性化トリプシンが上昇したが、膵星細胞の活性化は認めなかった。【結論】Irf2-/-膵腺房細胞ではオートファジー、トリプシンの活性化が持続的に起こり、軽度の膵の炎症が恒常的に持続しているが、それのみでは膵星細胞の活性化、線維化を認めなかった。Irf2-/-マウスにおいては、膵線維化を抑制する機構の存在が示唆された。 |